登山口の北沢峠は標高が高く、すでに2032mあります。
山頂までこんなに楽に歩けていいのか、と最初は罪悪感がありました…
が、今となってはそんなことは全く思わず、気合を入れず(安全に歩くという意味では気合を入れますが、危険個所もないので)にのんびり歩ける、とてもステキな山だと思っています。
北沢峠から4時間ほど。
歩きやすい道をぐんぐん標高を上げていくと、視界が開けて仙丈小屋が見えます。
夜になれば、星だけでなく街の夜景もきれい。
仙丈ヶ岳の山頂までは、小屋からほんの少しの距離。
この近さはいいですよ~。
安心感があります。
気軽に(トイレへ、飲み物を取りに、など)何往復もしちゃいます。
夕陽や朝陽だけでなく、到着してから眠るまで、ずっと過ごしています。
お尻の下のマットは必需品ですが、寄っかかれる岩もあるので、くつろげる。
ここの山頂で、若い男性に出会いました。
温かいミルクティを飲みながらブロッケン現象(影の周りに、虹のような輪っかができる。このような地形で多く出ます)をみたり、山頂からの展望を満喫していたら、ずっとこちらを気にしているのです。
「どうされました?」と聞いたら…
「ここから叫びたいんです。いいですか?」
いいもなにも…
ここは私のものではありません。
存分にどうぞ。
ヤッホーかな?
なんて思っていたら、大きく息を吸い込んだ彼は、
「28歳のオレ~、がんばってるか~?」
え?
そういうことはアンジェラ・アキのように「拝啓…」と手紙にしてみたらどうだろう。
今、いくつなの?
なぜ、28歳?
近い未来の、28歳のオレに向かっての叫びなのか。
気づくと大展望に背を向けて、唖然と彼を見上げていました。
そんな疑問を口に出せるわけもなく、28歳の自分に向けてのエールは続きます。
最後に、見上げていた私に向かって彼は「今日、誕生日なんですよ」
ハッ!
おめでとうを言わなくては。
「お、おめでとうございます」
鈍い反応でスミマセン。
ハッ、今日28歳になったのか聞けばよかった。
でもこれには続きがありまして、夕食後、彼は小屋番さんに
「オレ、今日、誕生日なんですよ」
え?
それ、今、言う?
夕食前の小屋番さんは、とても忙しく厨房で働いておりました。
知らない人に、いきなりそれを伝えられてもなぁ…
山の夜は、そんなことを思いながら過ぎていきました。
結局、誕生日がきて何歳だったの?