昨日の朝、職場での終礼後、先輩方が口々に
「くれぐれも気をつけるんだよ」
「(ニュースの)テロップに名前が出るような事故はダメだぞ、ちゃんと帰ってこいよ」
と声をかけてくれました。
心配して、でも気持ちよく送り出してくれる家族や周りの人がいる。
帰れば、話を聞いてくれたり、写真を見てくれたり。
幸せだと思いました。
何年か前、5連休なんて年に一度、夏休みとしてしかとれなくて、計画をたてた春から、すごくすごく楽しみにしていた山歩き。
台風がきていたのに。
もしかしたら進路が変わるかも、と本当は変わることはないって分かっていたけれど、心配する人がたくさんいたのに、私は北アルプスに向かいました。
妹はやめたから1人で。
心の中では、ずっと同じ言葉がぐるぐるしていた。
「ダメなら、また来年の夏まで(登るのを)待たなきゃいけないんだ」
毎日、6時に家を出て、週の半分以上を23時前に帰る生活。
ずっと楽しみにしてたんだよ…
と、雨と風が強くなったために休憩させてもらっていた山小屋の前で、涙がとまらなくなりました。
でも、私の夏休み中に天候が回復することは、ありえないだろうと感じました。
2日かけてどうにか双六岳まで来たけれど、下山しよう。
体がもっていかれそうな風を感じて、やっと納得できました。
遅い。
涙と雨で顔はぐちゃぐちゃですが、どうせ濡れるからいいや。
誰もいないし!
と、カラ元気で下山を開始しました。
1泊2日でこの山に来たときに、いつもご来光をみる好きな場所まで下りてきました。
今回はご来光を拝めなかったなぁ…
立ち止まり、槍ヶ岳を眺めました。
すると、どんっ! どんっ! とお腹に響くような重低音。
何の音よ?
風が山にぶつかる音だったと思います。
この説は確かめようがありません。
だって、誰にも会わなかったから。
もともと上空の雲は、すさまじい速さで流れていましたが、視線の高さの雲が一定量で固まるようにまとまり始め、塊となって標高2000メートルくらいの山腹にあたっては砕ける。
見たことのない光景でした。
今までも悪天候の中を歩いたことはあったけれど、こんなの初めてで。
雨具を激しく打つバチバチという音に負けないくらいの重低音。
ずいぶん長い時間がたっていました。
雨と風にうたれながら、ただ「すごい…」と眺めていました。
さて今回の台風の晩、夜中に雨は降ったようですが、5時に起きたときには、すでに路面が乾いていました。
風もまったくありません。
山は雲がかかっていましたが、予定どおり朝食後、8時に近くのバス停へ向かいました。
宿泊場所をここにしたのは理由があります。
私が乗車したバス停は「駒ヶ池」ですが、この次が「菅の台バスセンター」。
ロープウェイ乗り場まで自家用車は入れませんので、車の方はこの駐車場にとめてバスで移動します。
今回も30人以上が列をつくっていました。
良かった…
ひとつ前のバス停から乗り込んで。
もう少しあとの時間になると、もっともっと混みますので臨時バスも出るのでしょうが、今日くらいだと補助席を使えば乗れる状態です。
日光のいろは坂ほどではないにしろ、くねくねした道をバスは上り続けます。
酔いやすい方は、補助席でなく普通の席に座れるようにしたほうがいいです。
頭が揺れるとキツいですもん。
路線バス始発の駒ヶ根駅から乗るのが確実ですが、花や紅葉などの季節でなければ、平日であれば菅の台バスセンターより前に乗車できれば、まぁ大丈夫かと思いますが断言はできません。
高速バスから直接、路線バスに接続する場合は、高速バスを「駒ヶ根インター」で下りて、歩いて2分ですぐ大きな道路に出られます。
「女体入口(にょたいいりぐち)」という、なんともすごい名前のバス停から、この路線バスに乗ることができます。
新宿発の高速バスなら、路線バスとロープウェイがセットになった乗車券がありますので、そちらをご利用ください。
お得ですし、バスで小銭を用意しなくて済みます。
さて、終点のロープウェイ乗り場に到着。
また長い列です。
時速25km、秒速7mのスピードのロープウェイ。
相当な速さですよ、これは。
たった7分30秒で、標高1662mから2612mへ。
高山病になりやすい人は注意です。
症状が出てもおかしくない標高、スピードです。
途中、滝がいくつも見えたり、雲を突き抜けて雲海が見えたり。
これからの山歩きを想像して、ワクワクしっぱなしです。
標高を950mも上げたのに、気温が1℃しか下がってないし…
まさかの19℃もありました。
「これは真夏の気温ですよ。今年はほんとにおかしいです」と係員さんが教えてくれました。
乗り場がある、ホテル千畳敷から外へ出ると!
カール地形が広がっています。
雲が少しありますが、見たかった景色。
もう花の季節は終わっており、紅葉にはまだ早い。
だから、すいていました。
カールの中を、ぐんぐん高度を上げていけます。
最初の1時間弱がんばれば、あとはお散歩気分。
最初だけ、息が少し上がります。
しばらく歩くとガスに包まれました。
幻想的〜。
こう思うようにしてます。
水蒸気の粒が肌に触れるのが分かる。
髪も肌もカメラも、どんどんしっとりしてきます。
こんなじゃ景色も撮れないので、カメラをしまい、ザックにカバーをかけておきます。
雨が降りそうなときも、早めにカバーをかけます。
当然、山で雨に降られれば屋根はありませんから、すぐにずぶ濡れ。
だから心配なときは早めにかけちゃう。
雨具もザックとカバーの間に、挟み込んですぐ出せるようにしてます。
落とさないように、カバーはちゃんとかぶせてくださいね。
乗越浄土を過ぎると、ますます幻想的に!
太陽はぼんやり見えるのに、20m先も見えない!
誰かの鈴の音が、かすかにチリーンチリーンと聞こえます。
真っ白な世界でのこの音は…
この世ではないような。
途中、中岳を巻く道がありますが、わざわざこう書いてあるので、やめときましょう。
大して時間は短縮しません。
巻道を選ぶほど、中岳への登りがキツいわけでもありません。
中岳から下ると、すぐに頂上山荘。
営業していませんでした。
テント場としての利用はされています。
頂上木曽小屋と、木曽駒ヶ岳山頂への分岐を小屋方面へ。
15分かからずに到着。
ザックを置いてから、ゆっくり頂上へ行こうと思います。
続きます。