目が覚めると暴風雨。
予報のとおりです。
だって台風だから。
夕方までには抜けるとのことだけれど、さてどうしよう。
山で使っている雨具や傘もあるから、雨の中を歩いたっていいけれど、なんといってもサンスクリット語の般若心経が心配。
折っちゃおうかな…
それに、この風じゃおまいりも落ち着いてできないしなぁ。
う~~~~ん。
いろいろ案を出したけれど、とりあえず、本日泊まる予定の6番 安楽寺へ電話してみよう。
そうなんです、人生初めて宿坊に泊まるんです。
楽しみだったんですよ。
電話してみると、昼前には部屋に入れますとのこと。
宿の方が、安楽寺まで車で送ってくださるというのでお言葉に甘えてお願いしました。
「足が濡れるとマメできちゃうからね。最初からできると大変だから」
や、やさしい…。
安楽寺へ到着し、ザックだけ先に預かってもらえないか申し出たところ、
「台風だからキャンセルばかりで、3人しか泊まらないから」
とユニットバス付き、フローリング、畳ベッドの個室へ案内してくださいました。
思っていた宿坊と全然違うけれど…古いビジネスホテルの何倍もすてきな明るい部屋(壁は薄いので耳栓は必須アイテムです)でした。
清潔なところでないと泊まれない! という方もここなら心配いりません。
しかも受付の女性の紅茶などのティーバッグを分けてくださり、
「一日ゆっくり過ごしてね」
世間ってこんなに優しいっけ?
四国だから?
雨からも風からも守ってもらい、清潔で暖かな寝床とお風呂と食事が用意され、身支度を整えて出かけられることができるありがたさ。
普通に生活していくってことは、たくさんの人にたくさんのことをしてもらっているからだと、四国で毎日実感しました。
このことは忘れてはいけないと思いました。
さて、おまいりをしましょう。
大師堂ではひとりっきりだったので、戸を閉め切って心おきなく大きな声で般若心経を唱えてみました。
昨日の2番で教えてもらったように、数珠をすってみたけれど、まだうまくできない。
何回かやれば、あの女性のようにキレのいい音が出るのだろうか。
雨粒が当たる音がシーンとしたお堂の中にバチバチととても大きく響きます。
その中でひとりお経を唱えるというのは、なんだかとても特別なことでした。
人がいるとまだ恥ずかしくて…みんな唱えに来ているんだし、もう二度と会わない人たちなんだから恥ずかしがらなくていい!って思うのですが、なかなかできなくて。
全部の宿坊でやっていただけるわけではない(お遍路2回目の方が教えてくれました)そうですが、ここでは夕食前に、宿泊者だけに参籠(さんろう)があります。
おこもり、ともいうそうです。
一緒にまわりながら説明をしてくださるのです。
まず、本堂。
薬師如来が座位。
足元をさわって病気が治るよう、祈ります。
それから、阿弥陀如来のまわりを3周「なむあみだー」と唱えながら回ります。
最後だけ「なむあみだぶつ」です。
空海さんの直筆をなぞったものも多数見ることができました。
サインが「海」ではなく、上に「毎」下に「水」をくっつけた一文字でした。
それに、絵もうまいんです。
そして大師堂。
空海さんの膝にさわりながら
「足腰丈夫に、元気に歩けますように」
とてもいい時間でした。
「(宿泊)人数が少ないから」と、温泉とおつとめはナシでした。
夕食は唐揚げや魚のフライ、刺身などこれまた思っていたのと違っていましたが、泊まって良かった。
泊まらないと見れないところがたくさんあるんですもん。
そして夜。
辞めた職場の人からメールが届いていました。
昨日、その人からたまたま電話があったので
「2ヶ月四国にいるんだ~」
と話したら
「着替えはどうすんだ?」
「3組持ってるから洗いながらだよ」
「3枚で足りるわけないだろ! 1日1枚だぞ」
60枚持って行けるわけないだろーがっ!
こっちはブラジャーもなんだぞ。
それだけで60リットルザックがパンパンになるわ!
ほかのものが入らんだろーが!
っていうか、家にもそんなに持ってるヤツいないから!
という会話をしたのです。
その続きのメールでした。
「女の子なんだからちゃんと清潔にね。汚いのはダメだよ。倒れて汚いパンツはいてたら笑われちゃうからね」
パンツよりさ、倒れないようにする方が大事なんじゃないの?
それにその心配の仕方、おばあちゃんか!
でも、ありがとう。