登って潜って、月をみて。

生きていれば、こんな景色に出会うことができる。こんなに幸せな気持ちにさせてくれる。

高天原(たかまがはら)山荘

昨日泊まった薬師沢小屋と同じグループの山小屋です。

高天原山荘より✉ | 太郎平小屋グループ

 

ここには秘湯の中の秘湯、歩いてしか行けない温泉があるのです。

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富山側の登山口、折立から13時間。

岐阜側の登山口、新穂高から14時間。

トレイルランナーなら朝出発しても1日で到着できるそうですが、フツーに歩くなら2日かかります。

いつもは大きな景色を見たくて歩いているけれど、今日ばかりは「温泉♨温泉♪」と歌いながら歩いてきました。

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受付時に、温泉の説明もしていただけます。

女性専用の露天風呂が大きめで嬉しい。

20:00に清掃する以外はいつでも入れるとのことですが、片道1kmありますからね…

きっと行く気にならないでしょう。

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指定された寝床にザックを置いて、昨日まとめておいたお風呂セットをひっつかみ、すぐに温泉へ向かいます。

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何分かかるかなー。

サンダルでは歩きづらい道です。

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ゆっくり歩いて17分でした。

13分ほど歩いた頃でしょうか、かすかに硫黄の香りがしてきました。

どんな温泉なんだろう。

温泉につかっている間だけは、雨降らないでほしいなぁ。

露天だから屋根ないし。

 

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ついたー!

沢沿いにあるワイルドな温泉は、外で裸にならなきゃいけないし、こりゃ無理だ。

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橋を渡るのね。

向かって右が女性専用。

左が混浴。

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やったぁ、誰もいない。

ひとりじめだー♨

湯温もぬるくていい。

いくらでも入っていられそう。

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顔が乾燥してきたから、化粧水を塗ろうと脱衣所に入りました。

ペチペチ塗って、また湯船につかろうと脱衣場を出ると同時に…

男性が、入口ののれんを開けました。

あと5秒遅いか、30秒早いかにしてくれてたら裸を見られないで済んだのに…

なんてタイミング悪いおじさんなのよぅっ!!

「あ、どーもどーも」と言いながら入ってきます。

どーもじゃねーよ!!!

「ここ、女性専用なんですけど」

「え? そうなの?」と言いながら、さらに入ってきます。

は???

「女性専用ですから!」

「そんなはずはないけどね」

憮然としながら出て行きました。

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小屋で説明されたでしょ?

あー、気分わるい。

おしとやかじゃないもんで、誰もいないのに隠すための手ぬぐいとか持って出てないわけですよ。

そして「キャッ」とか、反射的にかわいく隠せるわけでもなく。

 

しばらくして、隣からさっきの男性の声が聞こえました。

「女性専用なんてないよなぁ?」

若い男性の声が答えました。

「あっちは女性専用ですよ」

シーン。

だよねー。

ズバッと言ってくれてありがとう。

 

強風にあおられ、虫たちが何度も落下してきて溺死の危機。

仰向けになり脚をバタバタ。

松ぼっくりがついた枝ですくい上げて、岩の上に戻すことを繰り返し。

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ほんと、いい色の温泉。

気づいたら2時間弱たっていました。

お腹がぐぅぐぅいってるし、そろそろ小屋に戻ろうかな。

 

行きは下り、帰りは登り。

せっかく流した汗をすぐにかくのは残念過ぎるので、なぜか抜き足差し足で静かにゆっくり歩きます。

24分かかりました。

強い風が、今は気持ちいい。

 

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小屋の前にひいてある冷たい沢の水をゴクゴク。

うまぁい。

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あと2時間ちょいで夕食だけれど、お腹がすいて我慢できない。

カップラーメンを注文して

「へぇー、モリブデンが採れるんだ」

なんて思いながら3分待っていると…

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さっきの男性が食堂に入ってきました。

「さっきはすみませんでした」

許す。

 

17:30 ランプの灯る食堂で夕食

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初めて出会う登山者同士がワイワイ賑やかな食卓より、静かな今年の食卓の方がずっと落ち着く。

 

18:00 

雲が山が、金色に染まりました。

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たったの5分間。

ほんとに景色との出会いは、一期一会だと思います。

日の出と日没、毎日同じことの繰り返しですが、毎日景色が違います。

 

風が強ければ景色もダイナミックになります。

身の安全が一番なのはもちろんですが、強い風のときしか見られないであろう景色にハッとさせられたこともあり、少し楽しみなのです。

明日は稜線を歩きます。

楽しく無事に歩けますように。

 

小屋内は夕食前から薄暗く、ヘッドランプがないと過ごせません。

ランプの柔らかな灯り、いいですね。

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温泉で体がゆるんだのでしょう。

夕食後、すとんと眠ってしまいました。

 

夜中起きて外に出てみると、パッと横切る少し大きめの影。

なんだ??

ウサギでした。

ウサギを山の中で見るとは思わなかったので少しビックリしました。

ベンチに座っていると、無害だと思ったのかウサギがぴょこぴょこ周りを歩き回りかわいかった〜。

星もたくさん出ており、不安だった明日の天気はもつのかな? と希望を少しもてました。

薬師沢小屋も、ここ高天原山荘も、私の持っているスマホは全く通じないため山の天気を確認できず、空を見て自分で予想するのみ。

 

5:15 すっきり起床

風は昨日と同じくらいか。

稜線はどのくらい吹いているかな。

外に出て水晶岳を見上げますが、分かるはずもなく。

桃色の雲がぽこぽこ。

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朝食をいただきます。

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今まで山小屋で食べることはほとんどなかったのですが、ちゃんと温かいものを食べて、ゆっくり支度をして、トイレを済ませて出発する。

この方がいいと思うようになりました。

転職して休みが増えて、少ない休みでガシガシ登る必要がなくなったこともあり、わざわざ暗い中を歩かなくていいと思うようになったのもあります。

 

そのときそのとき、自分に合った歩き方で山歩きを続けていければと思います。

 

続きます。