ふと目が覚めました。
トイレに行って、ついでに外に出ました。
「雨、どのくらい降ってるんだろう」
降っているか降っていないか、ではなくて、どのくらい降っているかを見に行ったのに。
目の前にあったのは、夜明け前の美しい空。
こんなことは全く想像していなくて、ぽかんとしてました。
夜明け前の美しい色が本当に好きです。
橙色から藍色のグラデーション。
何回も何回も見ているのに、涙が出てきます。
寒くて震えるまで見とれていました。
今回、後半ほど天気予報は良くなかったのです。
はじめの2泊は森の中なので、こんな朝を迎えられる日はないと思っていたから。
もりもり朝ご飯を食べていたら、私のスマホのカメラでは撮れないほどの強烈な光を放ちながら、太陽が姿を見せてくれました。
雨だと思っていたのに、まさかの青空。
あぁ、嬉しい。
ほんとに嬉しい。
こんなに幸せでいいのか。
白飯をかっこみながら、胸がいっぱいになってしまいました。
早く早く、山を歩きたい。
6:35 ザックを背負い、外に出ました。
ほかほかの味噌汁で暖まった体に冷たい風が気持ちいい。
靴ひもをギュッと結び、息が上がらない程度の急ぎ足でまずは樅沢(もみさわ)岳へ。
「持ってこなくて良かったのにな」
と思っていたサングラスを使うとは。
標高を上げていくと登山道の向こうから太陽。
7:05 樅沢岳 標高2755m
双六小屋からすぐ行けるので夕陽を撮影する人も多いです。
電波が通じたので、メールをしたり天気予報を調べたりしてゆっくりしました。
7:25 今は天気がいいですが、もともとは悪いのです。
名残惜しいけれど出発。
西鎌尾根を歩いていますが、こまかなアップダウンが続きます。
尾根の終点、槍ヶ岳が見えているのは励みになります。
8:00 硫黄乗越
確かに硫黄の香りがする。
乗越だけあり風が吹きつけてきますが、昨日の比ではありません。
むしろ気持ちいいくらい。
左には、昨日歩いた鷲羽岳も見えます。
やっぱり横から見るより、昨日のように正面からか少し斜めからがカッコイイなぁ。
右には弓折岳。
存在感があります。
道幅が狭く、鎖がかかっている箇所も多いですが、気をつけて歩けば危険は感じません。
写真で見ると「どこが道?」と言われますが、現地にいれば「ここを歩けばいい」と一目瞭然です。
登りではおそらく鎖を使わなくていいと思います。
下りの際には補助、くらいのつもりで。
下りでもくるっと後ろを向いて3点保持(腕と脚=2✕2で4つですが、そのうち3つでしっかり岩をつかんだり足場を確保して、どれか1つだけを動かすこと)で進んでいきます。
下りを前を向いたままお尻でズルズル落ちていく人をたまに見るのですが、体ごと滑ったりもしますし危ないです。
8:40 左俣乗越
9:30 ゴリラのような岩の手前
視界の右に真っ黒いものがチラッ。
「え?」
30mほど下です。
凝視しましたが、それを見つけられません。
しばらく立ち止まっていると、いきなり岩の陰から駆け出してきて、ハイマツの中にダイブを繰り返しました。
熊だったのか…
何を食べているのだろう。
今年は熊の目撃情報が多いような気がします。
真正面から出会ってしまったら足がすくむでしょうが、ひたすらハイマツにダイブする熊を、気づいたら20分ほど見ていました。
はっ!
動画で撮れば良かった。
熊も行ってしまったことだし、歩こう。
10:05 千丈乗越
やっぱり強風!!
ここがラスボス、最後の登りです。
振り向いて、昨日と今日歩いてきた道を眺め「おし!」と気合を入れます。
…やっぱりキツイよぅ。
西鎌尾根…
最初は意外と平気だなぁと思ったんですよ。
過去の自分はどうしてここが苦手だったのよ、なんて余裕だったのに。
そして気持ちと比例したのか、いきなり周囲がガスで真っ白になりました。
ともかく1歩を出そう。
足を前に出しさえすれば必ず着くから。
何度も自分に言い聞かせ、歩を進めます。
11:05 槍ヶ岳山荘
予報どおりなら雨だった。
雨の中、こんなキツイ登りをトボトボ歩かなきゃいけなかったんだ。
ずっと晴れてくれていた。
山荘で自分に手ぬぐい、会社でお世話になっている人への誕生日プレゼントに槍ソックスを購入。
槍ヶ岳は…
う~ん、晴れたりガスったりを繰り返してるしなぁ…山頂はすいてそうだけど…
またにしよう。
なんか疲れてしまった。
お腹すいた。
槍ヶ岳山荘で働いている男の子に写真を撮らせてもらいます。
つなぎがカッコイイ!
昨日の強風で落ちてしまったドラム缶を回収している最中でした。
相当重いそうです。
あれ~、槍がきれいに見える。
今、山頂にいる人いいね!
殺生ヒュッテに寄り道。
12:15 ヒュッテ大槍に到着
続きます。