登って潜って、月をみて。

生きていれば、こんな景色に出会うことができる。こんなに幸せな気持ちにさせてくれる。

山景 その1

前回のブログの最後にも書きましたが、昨年の緊急事態宣言時は2017年に行った四国一周をまとめました。

今年は、次に山に行ける日がくるまで、今まで山で撮ってきた景色でお気に入りのものを、1枚ずつご紹介していこうと思います。

ほとんどはすでにブログに載せていますが、何度見ても、そのときのことが思い出される大好きな写真ばかり。

シロウトの写真ですが、1枚でも「この景色、好き!」と思っていただけたら、すごく嬉しいです。

 

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1枚目は絶対にこの写真、って決めていました。

 

北アルプスの常念(じょうねん)岳への途中、山歩きに夢中になるきっかけになったご来光です。

すごいものを「見てしまった」と思いました。

印象に残っている朝はたくさんあります。

でも、これほどの朝はまだないのです。

私にとっては、それくらいの出会いでした。

 

初めてのテント泊、燕(つばくろ)岳から歩いてきて3日目の朝でした。

全ての食料、テント、寝袋(今みたいに軽量化されてないのでけっこう重かったんです)を背負い、初めて経験する重さでした。

満天の星空をテントから顔を出して寝っ転がりながら眺めたりして楽しかったものの、起きたあと寝袋を圧縮袋に詰め込むのが苦手で、朝から疲れていました。

 

常念小屋から常念岳の山頂まで、標高差は400m(高尾山に登るのと同じです)。

てっぺんで日の出を迎えるはずでしたが、疲れていて出発が遅れました。

足元は小さな石で滑り歩きにくく、進んでいる実感がありません。

ドラえもんで雲の上を歩ける道具あったよね」

どうでもいいことをぽつぽつ話しながら、どうにか足を動かしていました。

 

常念岳を境にして、左は隙間なく、雲海でうめつくされていました。

ご来光を見るつもりで歩いているのに、太陽がどこから昇るか全く意識していませんでした。

 

いきなり雲海から強烈なピンクの筋が見えました。

「?」

まさか、太陽なの?

足が止まりました。

なにか分からない「それ」を見つめます。

細い筋だったものが、ぐんぐん姿を現します。

隣にいた妹が息をのんだのが分かりました。

 

とても静かでした。

出発が遅れたこともあり、私たちの周りには誰もいません。

でも山頂には大勢の人がいたはずなんです。

それでも声は全く聞こえませんでした。

 

今ではご来光をみるとき、カメラのシャッターを押したり肉眼で見たり、交互に忙しくしているのですが、このときばかりはこの1枚だけ。

無意識に撮っていたようです。

 

「生きていれば、山を歩ければ、こんな景色に出会うことができるんだ」

想像もつかない景色を見ることができるたびに、今も変わらずそう思います。