登って潜って、月をみて。

生きていれば、こんな景色に出会うことができる。こんなに幸せな気持ちにさせてくれる。

山の本、山で本

電車で本を読んでいる人を見かけることは減ってしまい、前に座る人全員がスマホの画面に見入っているのが日常になっています。

だから、本を読んでいる人がいて表紙が見えそうなら、その向かい側に座ったりしちゃいます。

私は本を毎日読むし、好きな作家さんも作品もあるけれど、知らない本の方がずっと多いに決まっていますから。

表紙が見えれば、その人が好きな本を教えてもらえるってこと。

ちょちょいっとスマホにメモをして、図書館で借りています。

 

図書館の本にも、新しい出会いが挟まっていることがあるんです。

本を借りると、本の題名と返却期日が記載された紙を渡されるのですが、その紙はしおり代わりに使われることもあるのでしょう。

借りた本の真ん中あたりに、挟まったままになっていることもあって。

そこには、もちろん今読んでいる本の題名がありますが、その方が他にも借りていれば、それらの本の題名もズラリと載っています。

誰が借りたか分かるような個人情報は載っていないので、その紙を見るまで知ることのなかった本の題名をメモして借りています。

そうやって出会い、読んだ本がたくさんあります。

 

この本も、そういう1冊。

懐かしくて、また借りました。

コミックエッセイです。

絵がシンプルでかわいく、文字がとても読みやすくて好きです。

登山を始めたのは20代半ばのこと。

人と合わせることが苦手な私は、妹と行くことはあっても、あとはほとんどひとりで山を歩いていました。

たぶんいつものように、警察ものの文庫本を借りたときに挟まっていた紙。

印字された題名を見たとき、

「これは山の本なんじゃないか?」

と思ったのです。

図書館にすぐ見に行きました。

そうしたら、登山初心者が読めそうな本が何冊もあるではないですか。

「もしかしたら、山の雑誌もあるんじゃない?」

と本屋さん(そのとき住んでいたところの図書館では扱いがなかったので)に行って、「山と渓谷」に出会いました。

毎月毎月、読みました。

何年かたつ頃には、興味のある特集のときしか読まなくなってしまいましたが、たくさんのことを教わり、トライ&エラーを繰り返して、今も登山を続けられている私がいます。

 

そして、山で本を読むのが好きです。

山小屋に本棚がある場合もありますが、たいてい文庫本3冊くらい持っていきます。

そのうち1冊は必ず、樋口明雄さんの「南アルプス山岳救助隊K‐9」シリーズや、笹本稜平さんの「春を背負って」など、山を舞台にした本です。

本の中にある山の世界に没頭し、ふと顔を上げると目の前にどこまでも続く稜線が見える。

すごく贅沢な時間です。