登って潜って、月をみて。

生きていれば、こんな景色に出会うことができる。こんなに幸せな気持ちにさせてくれる。

不安な気持ち

年の始まりから2月くらいにかけては

「今年はどの山へ登ろうか」

と、思いをめぐらせて来店されるお客さまも多いです。

私も、天気が悪くて昨年あきらめた餓鬼岳や槍ヶ岳など、どんどん手帳をうめていますから!

 

一昨年に初めてご来店され、次の夏に富士山へ登ってみたい、と話してくださったお客さま。

ご夫婦で何度も高尾山などへ登り、昨年の夏、目標の富士山登頂を果たしました。

その後も、雲取山金峰山など2500mくらいまでの山をいくつか歩いてきて、今年の目標は「テント泊」とのこと。

テントやシュラフを買い、最後にザックを購入しました。

いくつもの大型ザックを試し、買うことを決めたものの…

「50じゃ、ダメかな」

分かります、その気持ち。

できるだけ軽いの、と思う気持ちも分かります。

でも、奥さまがとても細身で「山小屋1泊の荷物を背負うのが限界」と感じているとのこと。

それでも一緒にテント泊へ行くというのであれば、シュラフとマットはご自身で持ってもらうとしても、テントや食料は旦那さんが背負わなければならない。

体格の差があるのですから、持つ荷物の重さは同じであるわけがないんです。

 

お昼は山小屋の食事を利用するとしても、全く食料を持たずにテント泊というのは現実的ではありません。

お湯があればできる食事だけじゃ、ちょっとさみしい。

いや、ちょっとじゃない。

かなりさみしい。

でも軽量化するなら、そこがいちばん削れるところではあるが…

 

そして、ザックのパッキングは技術(慣れ)です。

山小屋泊の荷物を30リットルザックに詰めるのも、まだ難儀している様子のお客さま。

これからもパッキングを練習するとしても、単純に、シュラフとテントと食料と調理器具が増えるわけです。

小屋で過ごすのと、テントで過ごすのでは、防寒具も変わります。

それら全てが20リットル(今の30リットルに足して)で入ると思いますか? と。

そのことをイメージしたうえで、60リットルザックにしました。

 

その後も何度か来店されて

「やっぱり、重いザックを背負って歩けるか不安です」

水場が近かったり小屋で販売されていたりで手に入れやすい、登山道が歩きやすい、それらを考慮して、初めてのテント泊に良さそうなテント場をお伝えしてあるのでイメージもわいてきて、不安な気持ちが増してきてるんだと思います。

 

私だって、山を歩くときはいまだに不安です。

不安を完全になくすことはできないし、それでいいと思います。

不安な気持ちがあるからこそ、慎重になれると思うので。

でも不安を減らすことはできる。

「いつも歩いている高尾山で、テント泊の重さを背負って歩いて練習しましょう」

いつも歩いているからこそ、疲れ方の違いや、体にかかる負担の違いに気づけるはず。

 

高尾山から陣馬山へ縦走するのもいいのですが、私がテント泊をするために練習をしたときは高尾山を往復しました。

登りで疲れた体で重い荷物を背負って下るのは、想像していたより大変でした。

荷物が重いので登りは体力的にもちろんきつい、でも下りでふらついたら大変なので絶対に慣れておいたほうがいいと思うのです。

だからあえて、高尾山往復です。

標高差400mを2回登れば体力もつきますし。

 

 

テント泊ほどの重さでなくても、初めて山へ行くのであれば、一度は経験しておいたほうが絶対に楽しめます。

例えば、富士山の往復標準タイム(吉田口)は、お鉢巡りを入れなくて9時間ほど。

そんな長時間歩けるか不安なら、高い山でなくてもいい、険しい道でなくてもいい、9時間でなくてもいい、でもできるだけ長い時間歩いてみるんです。

防寒具や水など必要と思うものを入れたザックを背負って歩けば、よりイメージできます。

 

適切な装備を揃えたり、行く山についての情報を得ることも「山を登るための準備」です。

その山に、水を補給できるところはあるか、トイレはあるか、天候の悪化や体調不良の際に身を寄せられる小屋はあるか…

登山届の提出や、どこの山へ誰とどんな行程で行くのか、一緒に暮らしている人にも知らせておくことも準備に含まれます。

 

夏までまだ5ヶ月「も」ある。

夏までもう5ヶ月「しか」ない。

不安を減らすためにできる準備をして、いろんな山で楽しみながら体力をつけていければ、いきなり本番よりもっともっと楽しいはずです。