登って潜って、月をみて。

生きていれば、こんな景色に出会うことができる。こんなに幸せな気持ちにさせてくれる。

奥多摩 川苔山へ

奥多摩方面の古里駅へJRで向かいます。

放送で案内がありますが、途中の駅で車両の切り離しが行われることがあります。

休日にだけ運行するホリデー快速も同様です。

ご注意ください。

目的地にたどり着かなくなってしまいますよ。 

 

古里駅に到着。

気温は氷点下、息を吸うと鼻が痛い。

駅のトイレ、和式にしてもらえないかな…

洋式だと便座が冷たいんですけど…

 

先日、ヒール靴で爪先を痛めてしまったので、きっとダメだよなと思いつつスニーカーで向かいました。

結論から言うと、登山靴なら登れていましたが、スニーカーはダメでした。

標高900メートル強の赤杭山(あかぐなやま)で引き返しました。

雪でぬかるんだ道を進むごとに、靴下を通り越して足にまで泥が染み込んでくる…

冷たい。

 

落ち葉で段が見えず、ただの傾斜だと思い足を踏み外して尻餅をつきました。

久しぶりの尻餅。

やっちゃったなぁ。

昔は「転ばない」が目標だったこともあったなぁ。

 

川苔山は、少し道が分かりにくい箇所があります。

雪が積もっている場合、踏み跡があればいいですがなければさらに分かりにくい。

 

これも練習です。

不安な道を歩くとき、 その道に足を踏み入れたら振り返ります。

目印になりそうな木などがあるとなおいいですが、振り返った風景をスマホでパシャリ。

写真を撮っておきます。

それを繰り返し、5分ほど進みます。

それでもやっぱり違うと思うなら、来た道を分岐まで戻ります。

木々に囲まれた中でぐるりと見まわすと方向感覚が狂ってしまうので、そのために写真を撮りました。

分岐まで戻ったらもう一度、地図を確認し「やっぱりこっちだ」と確信がもてたら進みます。

遭難というのは、自分の居場所が分からなくなることも含まれます。

 

さて下山後。

古里駅から奥多摩駅まで3駅。

計画では奥多摩駅へ下山してくるはずでしたが、電車になってしまいました。

歩いて10分ほどの「もえぎの湯」。

奥多摩駅周辺へ下山してきたときには大体、ここの湯に浸かってから帰ります。


 

急坂を登ったり下ったりしていると、妹の名言を思い出します。

「登りで遅筋、下りで速筋が鍛えられる。登山って素晴らしい」

だそうです。

 

 

山の香り

山の香りが好きです。

 

どの植物の香りなのか、知らないけれど調べなくていいんです。

分からないままで。

 

ただただ大好きで、いつも深呼吸。

立ち止まっては、胸いっぱい吸い込んでいます。

 

夏から初秋にかけて、標高の高い山で太陽の光がたっぷり降り注いでいるときに香ります。

この香りの香水がほしいなぁ。

 

雨が降ったあとの葉っぱや土の香りも好きです。

鳥のさえずりも葉っぱのこすれる音も好きです。

太陽の光を透かして葉っぱが輝いているのも好きです。

 

f:id:yueguang:20190113171734j:plain

新緑の黄緑も 紅葉の赤や黄色も 太陽の光を美しく透かします

 

山にいるだけで、好きなものに囲まれる時間を過ごせます。

登山の計画をたててみる

登山口にあるポストに登山届を入れたこと、ありますか?

今は、個人情報の観点と利便性からインターネットでの提出もできます。

 

登山届を作成することで、漠然としていた計画もよりしっかりとしたものになります。

エスケープルートは?」

「装備品は?」

といったことにも目を向けるからです。

エスケープルートとは

「天候や体調が悪化した際に、途中で下山できるルートはありますか?」

ということです。

下山できる道がないのであれば「ナシ」です。

 

私は「名前、住所、緊急連絡先、装備」など毎回かわらない部分をA4に印刷しておいて、日付やメンバー、歩くコースだけを記入して登山口のポストに出しています。

 

 

日帰りのときも、何日も山にいるときの最終日も

〇〇時になったら下山を開始するというルールを設けています。

余裕をもった計画であれば

「あと山頂まで10分なのに…」

くらいならおまけしてしまいますが、1時間に1本しかないバス、しかも最終バスの発車時刻に合わせての計画だとしたら?

 

下山を急ぐといいことありません。

南アルプス鳳凰三山を歩き、広河原のバス停への道。

 

f:id:yueguang:20190212215154j:plain

合掌しているようなオベリスクのある地蔵岳

 

もともと最終バスを予定していましたが、少し足を速めれば最終より1本早い(2時間ほど前の)バスに乗れるのではないか。

そうすれば甲府でゆっくり、鶏モツと蕎麦を食べられる~。

欲が出てしまいました。

大きめの石がずっと続くガレ場。

歩いて2日目なので体も軽く、ぽーんぽーんと軽快に石の上を跳ねていきます。

半分走っているようなものなので、歩くより断然速い。

 

「これならバス乗れる~」

浮石には気をつけていたはずですが、ウキウキしすぎて注意散漫だったのでしょう。

足元がグラっとし、慌てて違う石に足を移しましたがそれも浮石。

無理に態勢を変えたことによって、手より先に、左上半身を石に叩きつけてしまいました。

 

息が吸えない、と焦ったほどの痛みでした。

しばらくしてなんとか立ち上がれたので、救助を呼ぶことは考えませんでした。

歩けそうだし、救助ヘリは数少ないですし、こんなことで呼べない。

それに、救助を呼んでも今感じている痛みは減りません。

 

念のために持っているストックを出してみましたが、ストックを突くと激痛。

あきらめて再び収納します。

よたよたと歩き続けます。

 

1本前のバスはとっくにあきらめていますが、最終のバスはあきらめたくない。

バスなら2000円が、タクシーで帰ったら1万円オーバーですから。

 

バス乗り場が見えたときの安心感。

息を吸うのもやっとなのに、鶏モツ食べるなんて無理。

 

翌日、仕事帰りに医者へ行ったら肋骨折れてました。

 

陣馬山~高尾山

始発でJR藤野駅へ。

陣馬山へは、高尾駅からバスを利用することもできます。

混雑しているときは増便されることも。

バスは本数が少ないので電車で登山口へ行ける方法があれば、時間を読みやすい電車にしています。

 

陣馬登山口から一ノ尾根を登ります。

登り始めてしばらくすると

「…ん? なんで、おばあちゃんがこんな朝早く(ベンチに)座ってるんだ??」

不思議に思いましたが、そのまま歩いていきました。

 

猿だ!!

背中が丸まってるから、おばあちゃんかと思ったんだ…

なんでおじいちゃんじゃなく、おばあちゃんだと思ったのか…なにが性別を決めたんだろう…

どうでもいい意味不明のことが、頭の中でぐるぐると回ります。

 

そして私の周りは、猿が4匹回っています。

怖い…

大きな猿が輪を崩し、離れたくてよろよろと10歩ほど進んだ私と並走するように1列になりました。

 

とりあえず、日本語で丁寧に話しかけました。

「あの、静かに歩いていきますので、どうか離れていただけないでしょうか」

それなのにガサッと急に近づいてきます。

「すみませんすみません!」

いやぁ~、恥ずかしながらビビりまくりです。

 

一緒に歩き始めます。

距離にして50メートルほどでしょうか。

急に飽きたのか、先頭の大きな猿がふいっと離れていきました。

ほかの猿たちも続きます。

浅かった呼吸がやっと戻りました。

 

このコースは峠と山頂の繰り返しです。

まき道を利用すればアップダウンなく進めますが、それではただ気持ちよく歩くだけになってしまい、トレーニングになりませんので全部の山頂を通過。

 

城山の「きのこ汁」美味~。あったまる~。

 

高尾山の山頂付近で、おばちゃんが野菜や果物を販売していたことがあります。

秋にはナメタケ、ムカゴ、ハヤトウリ(皮をむいて生でも焼いても)、柿、ザクロを買いました。

また買いたいけれど、なかなか会えない。

 

駅から駅までで7時間、歩行距離19kmほど。

歩きやすくていいんだけれど猿は怖かったな。

熊鈴、鳴らしていますか?

熊鈴…山には必ず持参し、常に鳴らして歩かねばならないものだと、山1年生のときは思っていました。

必需品リストにも載っていましたし。

1人で歩いているときはもちろん無言ですので、熊に自分の存在をアピールして

「どうぞ何事もなく通してください…」

と、やり過ごせればいいなと思っていました。

 

対人間の場合も同じです。

薄暗いとき(早朝から歩くこともあるので)に、いきなりバッタリ出会うと相手も驚くと思います。

自分の存在を近くにいる人に知らせるために、誰かの気配を感じたら軽~く咳ばらいをしたり、地味にそんなことをしています。

ずっと咳払いをしているのも疲れるので、熊などを避けるだけでなく、熊鈴はそういったことにも使えそうだと思っています。

 

しかし最近の情報では、人間に慣れた熊だと「鈴を鳴らす」ことによって人間がいると分かり、寄ってくることもあるそうです。

2017年の秋に下山してきたら、観光客でいっぱいの上高地を熊が歩いていました。

こういう光景を見てしまうと、人間を恐れていないのかもしれないと感じてしまいます。

 

以前は、「熊は臆病だから人間に出会うと驚いて攻撃してしまう」と言われていましたが、変わってきたのでしょうか。

じゃあどうすればいいんだよ…と思いますが、私も1度奥多摩でカーブを曲がったら、向こうのカーブから子熊が出てきたことがありました。

そのとき、熊鈴は鳴らしていませんでした。

 

子熊がいるなら、近くに親熊がいるのが当然だと思えます。

子熊もびっくりしたようでした。

真っ黒なのに表情が見えた気がしました。

私も無言でとても驚いていました。

本当に驚くと、声は出ないもの。

変質者に連れていかれそうになったら「大声を出せ」と小学生の頃に教えられましたが、絶対に無理ですね。

ブザーの紐も引けるかどうか。

 

子熊は全く動きません。

私はカーブから3歩ほど出たばかりでした。

顔は動かさずに視線だけ動かして、周囲に親熊がいないかを確認しました。

親熊の姿は視界に入らず、葉がこすれる音も聞こえません。

 

子熊を見つめながらゆっくりと後ずさりしてカーブを戻り、見えなくなってから3分ほど一生懸命走りました。

そのまま来た道を下山して、温泉に入って帰りました。

時間をおいても同じ道を通るようなことは、私にはできません。

豆腐料理を食べて帰りたかったけれど、あきらめましょう。

 

クライマーの山野井さんのご自宅は奥多摩にあるそうです。

レーニング中に熊とバッタリ出会い、顔や腕に深い傷を負いました。

「熊を恨む気持ちはない」とおっしゃっていた記憶があります。

私たちが、熊が普段生活している場所に踏み込んでいくのです。

広い山の中で、お互いの姿を認めずに過ごせるのがいちばんなのでしょうが、

「出会ってしまったときに、自分はどうするか」

は必ず想像しておかないといけないな、と思いました。

  • 声は絶対にあげない
  • 目を合わせない
  • 基本的に自分からは動かないが、しばらくして熊が動いてくれなければ静かに後ずさり
  • こっちに来たら、急な下り斜面を走って逃げる(前足が短いから下りは苦手という説があり、それにかけたいが自分もケガをしてしまう可能性も)
  • 至近距離で襲ってきたら、うつぶせになり背中はザック、頭と首の後ろは手で守る

私が心掛けているのは、以上です。

 

何か、熊にとっても人間にとってもいい方法はないのでしょうか。

いくら効果的だと言われても、私は熊鈴のチリチリ自己主張する音が、どうにも好きになれないのです。

耳障りに感じてしまいます。

危険を避けるために鳴らさなければいけない、と思っていた頃もイヤでした。

 

せめて好きな音色を、と種類がありそうなので熊の本場、北海道に旅行した際探しました。

それをカラビナにつけて普段はウェストハーネスのポケットにしまっていますが、子熊に出会ったときのようなカーブや、森の中を進んでいくときにだけ、引っかけて鳴らしています。

 

山の中は、たくさんのきれいな音であふれています。

鳥の鳴き声や、風が揺らす葉の柔らかな音、自分の足音しか聞こえない静寂の時間も心地いいのです。

人工的な音は、それらを消してしまいます。

 

グループでワイワイ歩いているのに、全員が熊鈴を鳴らしている場面に出くわすと

「鈴、いらないんじゃないかな…」

と失礼ながら思ってしまいます。

今だけそのテンションじゃないでしょう、ずっとですよね…

後ろからの音の方がよく聞こえるので、追い抜いてもらいます。

 

見晴らしがいい場所を歩くときも、鳴らす必要がないと思いませんか?

ずぅーっと気持ちのいい道が続いているアルプスの稜線、水場もありませんし。

 

南アルプス鳳凰三山のひとつ、薬師岳近くの小屋には看板がありました。

「熊は出ません」

鈴の音ではなく、自然の音をみなさんで楽しんでくださいという配慮だと思います。

 

登山口には、さまざまな注意書きがあるので、入山する際は必ず目を通します。

「〇月〇日、熊の目撃情報がありました」

「登山届は出しましたか?」

などが多いです。

 

ヘッドランプと同じで必ず熊鈴は持参しますが、常に鳴らす必要があるか少し考えてみてもいいのかなと思いました。

高尾山でも鳴らさなければいけないでしょうか。

 

そして下山したら…

公共交通機関に乗り込む際にはストッパーをつけ音が出ないようにするか、ザックの中にしまいましょう。

当たり前のことだと思われるでしょうが、鳴らしっぱなしの方もいます。

静かな車内、気になりだしたらイライラさせてしまうと思います。

私たちには耳慣れている鈴の音色ですが、山を歩かない方からしたら騒音以外の何物でもないと思います。