登って潜って、月をみて。

生きていれば、こんな景色に出会うことができる。こんなに幸せな気持ちにさせてくれる。

アルプス一万尺の歌詞

私が小学生の頃(30年くらい前)、女の子たちの間で手遊び歌が流行りました。

線路は続くよどこまでも~♪

みかんの花が咲いている~♪

 

その中に

アルプス一万尺~♪

ありましたよね?

今の若い子はやったことないかな…

 

このアルプス一万尺、なんと29番まで歌詞があるそうなんですよ。

まぁ、1番1番の歌詞がとても短いのですが。

しかし、それぞれに「ランラララ~~~」とけっこう長めのランランがもれなくついてくるので、全部歌えば相当な長さになります。

 

アルプス一万尺 小槍の上で アルペン踊りを さぁ踊りましょ」

これが1番の歌詞なのですがこの「小槍」ってみなさん、何を指しているかご存知でしょうか?

それにしても、アルペン踊りってどんなだろう? 

山頂に着いた喜びを踊って表現?

 

日本で標高5位の3180メートル、北アルプス槍ヶ岳

長野県と岐阜県にまたがっています。

登山を始めると、この山に登ることが目標になる人が多いような気がします。

どこから見ても「あっ、槍ヶ岳!」って分かりますし。

登山をやらない人にとっての富士山のような認知度ではないでしょうか。

この槍ヶ岳の山頂より、少し低いところにぴょこんと出っ張っている角(つの)のような岩。

これが「小槍」です。

槍ヶ岳の山頂へは、梯子がいくつかあるものの岩場を歩けば登れますが、小槍にはクライミングの技術がないと登れませんし、そこの先っぽで踊れるかなぁ…

とても狭いですよ。

浮かれて踊れば落ちる。

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大きく突き出ている岩の右に小さくぴょこんとあります

作詞家不明、曲はアメリカ民謡だそうです。

私が好きな歌詞は2番。

「昨日みた夢 でっかいちいさい夢だよ ノミがリュックしょって 富士登山

がんばってほしいものです。

本当にでっかい夢だから。

 

4番「お花畑で 昼寝をすれば 蝶々が飛んできて キスをする」

絵が浮かびますよね~。

 

6番「一万尺に テントを張れば 星のランプに 手が届く」

手が届きそうなくらい大きく瞬いている星々がランプなんですね。

ロマンチックです。

 

興味深い歌詞が9番です。

「蝶々でさえも 二匹でいるのに なぜに僕だけ ひとりぼっち」

あれ? 

雲行きが怪しくなってきました。

山じゃないじゃん!

 

11番「山にこだまは 返ってくるけど 僕のラブレター 返ってこない」

こだまなら「大好きだよー」に「大好きだよー」って返してくれるのにね。

 

14番「夢で見るよじゃ ほれよが浅い ほんとに好きなら 眠られぬ」

どんだけ恋焦がれてしまっているのですか。

今夜も眠れていないのでは? と心配になります。

 

それなのに、なぜか15番から再び、山の歌詞に転じます。

21番「ザイル担いで 穂高の山へ 明日は男の 度胸試し」

などなど。

フラれて山が恋人になったのでしょうか。

20番「命ささげて 恋するものに なぜに冷たい 岩の肌」

山に命をささげちゃってますもんね。

 

28番「名残つきない 大正池 またも見返す 穂高岳

わかる~。

さっきまであの山にいたんだよなぁ…って。

河童橋まで下りてきてしまうと、何度も何度も振り返りって切なくなります。

 

 

子どもと山へ!

ご自身が歩いたことのある山でも、初めての山でも。

不安であれば、所要時間など大体のことが分かっている山にしましょう。

お子さんと歩くのって楽しいですよ~。

子どもの目線の高さで見る山では、ご自身が歩いたことがあっても初めての風景に出会えるかも!

私たちには見えてないものが、子どもにはきっとたくさん見えているのです。

 

ある日、丹沢の山へ一緒に登ったことのある同僚女性から

「甥っ子を山に連れて行きたいんだけど一緒に行ってもらえないかな」

と相談されました。

小学校4年生の男の子。

初対面の小学生と、何を話したらいいんだろう…

流行ってるテレビとかキャラクターも分からないしな…大丈夫かいな。

ドキドキしながら、高尾山口駅へ。

同僚の後ろに隠れっぱなしの男の子。

私も人見知りするから分かるよ~、その気持ち!

 

登りには「6号路」、下りには「稲荷山コース」を選びました。

6号路と稲荷山コースは、より自然を身近に感じられるからです。

桜の開花が遅い年でした。

その1週間前に高尾山から先の陣馬山まで歩いたのですが、4月中旬になるのにまだ桜は満開になっていませんでした。

「これなら満開の桜を見せてあげられるかなぁ」

と期待していたら、前日の雨で散っていました…あーあ。

桜の下のテーブルで食べるおやつ、準備してたのにな。

桜はなかったけれど、新緑が太陽の光にキラキラと美しかった。

 

そのときはそう思っていましたが、高尾山もけっこうメジャーになり桜の季節の土日祝なんてすごい混みようです。

ケーブルカーはもちろん、登山道も人・人・人!

避けた方がいいかもしれません…。

 

子どもは身軽です。

すぐ坂道にも慣れ「まだぁ~?遅いよー」

と元気いっぱいかと思えば「まだ着かないのー?もうやだー」

いろんなものに興味津々。

あっちを見たり、こっちを見たり、まっすぐに進みません。

寄り道が多くなるので、もちろんコースタイムは2倍以上で見積もっておきます。

「まだ?」

「もうちょっとだよ」

「ねぇ、まぁだぁ?」

「もうちょっと(までもうちょっと)だよー」

繰り返し。

大人はズルいですね~。

生意気な態度や言い方がかわいくて笑いっぱなしでした。

200段の階段にへこたれて「帰りたい…」

と涙目になっていましたが、山頂に着いた途端に「もっと向こうまで歩きたいよぅ」

いやいや、タイムオーバーです。

下山を開始する時間は、あらかじめ決めておくことです。

〇時になったら山頂まで着いていなくても下山、と。

本当にあと少しならいいですが、ゴールを「山頂」にしてしまっていると時間がかかりすぎている場合、真っ暗な中を下山することになってしまいます。

ヘッドランプまで用意できていればまだいいですが、スマホの懐中電灯では全員の足元を照らせません。

 

高尾山口駅には、下山後も楽しめるスポットがあります。

トリックアート美術館で写真をたくさん撮りましょう。

通路に紙幣が落ちているのですが、分かっているのに何度だまされたことか…

 

もうひとつオススメ。

TAKAO 599 MUSEUM

美しすぎる標本は芸術ですよ。
いつまでも見てしまいます。

 

電車の座席に座った途端にコテン。

いっぱい遊んだね。疲れたよね。

「また行きたい!」と言ってくれたそうで良かった。

 

最初が肝心だと思います。

大人の気持ちを通すのではなく、ゴールは山頂ではなく「子どもといーっぱい楽しむこと」にして山を歩くのを家族で好きになれたらいいですね。

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蜘蛛の巣についた水滴、こんなのを探すのも楽しいですよ

 

 

 

 

 

 

雲取山の夜、熊の唸り声

妹と雲取山の山頂にある避難小屋に泊まったときのこと。

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この木に毎回挨拶をしています

途中で抜いた年配の女性に

「私、今夜テントで泊まるんだけど大丈夫かしら」

何について大丈夫か聞かれているのかが分からない。

気温か?

12月上旬のことですが数日前に降ったのでしょう、足元には数センチの積雪がありました。

「えーっと、夜中寒いかということなら寒いと思います」

「そうよねぇ、ご飯もねぇ」

ご飯?

持ってこないでテント泊ってことないよね?

「寒いのが無理そうだったら避難小屋が山頂にありますし、山小屋もありますよ」

とだけ伝えて先に行きました。

私たちは寝袋は持参していましたが、避難小屋がいっぱいだったら、山頂から少し下った雲取山荘に泊まる予定にしていました。

 

避難小屋には私たちだけでした。

そして私たちが夕食の支度を終えようとした頃、女性は到着しました。

こんな時間(外は真っ暗)だから、もう誰も来ないだろうなぁと思っていたのでビックリ。

「やっぱりテントやめちゃったわ」

「あら、ラーメンなの? いいわねぇ」など頻繁に声をかけてきます。

 

翌日は長時間歩く予定だったので、早めに寝袋に入りました。

寒かったので、夕ご飯で体が暖まっているうちに眠りたかったのも理由です。

途中で何度か目は覚めましたが、眠気も吹っ飛ぶような目の覚め方をしたのが深夜1時過ぎ。

動物の唸り声がします。

かなり大きい。

妹を見ると、妹もこっちを見ていました。

「まさか、熊じゃないよね?」

小声で囁きあいます。

避難小屋の周りをぐるぐると歩いているのか、唸り声は遠ざかったり近づいてきたりします。

「ここの扉、二重だったよね」

「確か、互い違い(どっちか忘れましたが、1枚目を左に開けるなら2枚目は右に開けるということ)になってた。熊って頭いいかな、開けれちゃうと思う?」

「開けれなくても、体当たりで一発でしょ」

どうしようどうしよう。

全然頭が回らない。それでも考えました。

とりあえず、一番上に着ていた服を脱いで左腕に巻きつけました。

一撃目を受け止めることになるかも、と思ったからです。

 

すると明らかに唸り声が変わりました。

強弱がない、笛のような甲高い音になったのです。

「あれ?」

「え?」

妹と同時に、避難小屋の対角線で寝ていた女性の元へ。

 

そうです。

ホンモノの熊ではないのです。

女性のイビキです。

すみません。

でも妹と私の恐怖は相当なものでした。

たった10分ほどでしたが、「2人そろってダメだったら、お父さんとお母さんに何て言おう(ダメだったら言えるわけないのに、動転しているから)」

ここで熊に襲われたら、まず逃げ切れないと思いましたから。

 

朝5時。

「あ~、あまり眠れなかったわ」と言いながら起きてきた女性に絶句。

私たちもです。

「あら、水が全部凍ってる~」

寝袋の外に出しておいたから(寒い季節は無造作に外に出しっぱなしにしません。保温袋に入れてザックの真ん中に入れたり、寝袋の中で一緒に寝たり)です。

今、室内ですがマイナス5℃ですから。

 「あなたたちのは?」

あげられません。これから歩く分もあるんです。

ご自分で溶かしてください。

「一緒に歩きましょうよ」

辞退させていただきます。

 

避難小屋は、広くはないので人数が多いと狭く感じるでしょう。

建物はしっかりしており、少し歩けばトイレもあります。

山頂からは富士山、街の灯りが見えます。

南アルプス 仙丈小屋

登山口の北沢峠は標高が高く、すでに2032mあります。

山頂までこんなに楽に歩けていいのか、と最初は罪悪感がありました…

が、今となってはそんなことは全く思わず、気合を入れず(安全に歩くという意味では気合を入れますが、危険個所もないので)にのんびり歩ける、とてもステキな山だと思っています。

北沢峠から4時間ほど。

歩きやすい道をぐんぐん標高を上げていくと、視界が開けて仙丈小屋が見えます。

夜になれば、星だけでなく街の夜景もきれい。

 

仙丈ヶ岳の山頂までは、小屋からほんの少しの距離。

この近さはいいですよ~。

安心感があります。

気軽に(トイレへ、飲み物を取りに、など)何往復もしちゃいます。

夕陽や朝陽だけでなく、到着してから眠るまで、ずっと過ごしています。

お尻の下のマットは必需品ですが、寄っかかれる岩もあるので、くつろげる。

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朝、この時間が大好きです


 

仙丈小屋 – 山小屋

ここの山頂で、若い男性に出会いました。

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温かいミルクティを飲みながらブロッケン現象(影の周りに、虹のような輪っかができる。このような地形で多く出ます)をみたり、山頂からの展望を満喫していたら、ずっとこちらを気にしているのです。

「どうされました?」と聞いたら…

「ここから叫びたいんです。いいですか?」

いいもなにも…

ここは私のものではありません。

存分にどうぞ。

ヤッホーかな?

なんて思っていたら、大きく息を吸い込んだ彼は、

「28歳のオレ~、がんばってるか~?」

え?

そういうことはアンジェラ・アキのように「拝啓…」と手紙にしてみたらどうだろう。

今、いくつなの?

なぜ、28歳?

近い未来の、28歳のオレに向かっての叫びなのか。

気づくと大展望に背を向けて、唖然と彼を見上げていました。

 

そんな疑問を口に出せるわけもなく、28歳の自分に向けてのエールは続きます。

最後に、見上げていた私に向かって彼は「今日、誕生日なんですよ」

 

ハッ!

おめでとうを言わなくては。

「お、おめでとうございます」

鈍い反応でスミマセン。

ハッ、今日28歳になったのか聞けばよかった。

 

でもこれには続きがありまして、夕食後、彼は小屋番さんに

「オレ、今日、誕生日なんですよ」

え?

それ、今、言う?

夕食前の小屋番さんは、とても忙しく厨房で働いておりました。

知らない人に、いきなりそれを伝えられてもなぁ…

 

山の夜は、そんなことを思いながら過ぎていきました。

結局、誕生日がきて何歳だったの?

南アルプス 仙水小屋

 

布団がふっくら太陽の香りで感動…

「明日はきっといいご来光だよ」

小屋番さんにそんな言葉をかけてもらった上、この布団!

幸せ過ぎる。

完全予約制の山小屋なので、つめこまれることもなく快適に眠れました。

いつもこうだといいのになぁ…

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左奥の山頂が白い山が甲斐駒ヶ岳です(右は北岳

この日の夕食は、みんなで外に出ていただきました。

心地よい風の音を聴きながらの食事は、ゆっくりかんで味わうことができました。

ご飯はふっくら、おかずもいっぱい、味噌汁も具沢山。

ここは旅館ですか?

でも周りは山。周りにいる人たちも浴衣ではなく、登山服。

不思議な感じで、笑ってしまいました。

 

南アルプスNET 山小屋情報 仙水小屋

あと…文句を言っている人もいましたが、ここのウリだと私は思っていることがあります。

朝、けっこう強制的に起こしてくれるのです。

ここには下山してきて泊まる人は、あまりいないのでは?

これから甲斐駒ヶ岳に登る人のための山小屋です。

甲斐駒ヶ岳の山頂は9時過ぎると、雲の中に入ってしまうことが多いそうです。8月下旬に登ったときに、そう教えていただきました。

せっかくだからいい景色をみてほしい、それなら4時(3時30分のときもありました)に朝ご飯を食べてすぐ出かければ、途中の峠でご来光も見られるし、山頂で素晴らしい展望に出会える。

そんな配慮で朝食の準備をして送り出してくれるのです。

一体、何時からご飯を炊いてくれているのでしょう。

寝ぼけて前後に揺れながら正座して、お膳からおかずを食べているご夫婦がいておもしろかったなぁ。

 

出発のとき「朝早くからおいしいご飯をありがとうございました」と伝えたら、笑顔で見送ってくれました。

 

余談ですが、ここの登山口に到着するまで朝早くから

新宿~甲府   高速バス2時間30分

甲府~広河原  バス2時間

広河原~北沢峠 バス30分

続けてバスに揺られすぎて腰の痛みがすごかった(歩いてダメそうならすぐ下山するつもりでしたが)のですが、仙水小屋で眠り翌日元気に全身を使って歩くことができたせいか、途中で「カクン」と体の歪みが正しい位置に戻ったような感覚があり、痛みが全くなくなりました。

激しい運動ではなく、ゆっくり歩ける全身運動。

自身の健康のためにも、山歩きはずっと続けていきたいと思っています。