登って潜って、月をみて。

生きていれば、こんな景色に出会うことができる。こんなに幸せな気持ちにさせてくれる。

南アルプス 北岳へ その3

5:25 出発

暗いなぁ…

風が強いので、早めに稜線から下りたい。

昨日歩いたトラバース道を行こう。

 

でも、北岳の山頂へ向かう稜線をいくつものヘッドランプが進んでいくのです。

本気ですか…

 

でも、気持ちも分かる。

私にとっての柏島へのダイビングが、そうそう行ける場所でないのと同じです。

今回少しお話しただけでも、京都、長崎、宮崎、青森からいらしていました。

車を運転してくるのも、飛行機や新幹線を予約してくるのも、大変なことだと思います。

でも、それでも…

この風での稜線歩きは怖い。

どうか、気をつけて。

なんも見えんなぁ…

昨日、下山すればよかったのでしょう。

でもやっぱり期待してしまったのです。

今回は、夕陽も朝陽も見ることは叶いませんでしたが、稜線を歩けたし、たくさんのいい景色に出会えました。

 

風、こわっ。

よつんばいになります。

でも、あと20分もすれば陰に入れる。

 

ふぅ。

嘘のように、風を感じません。

丸太歩きがスタート。

濡れている岩も滑る~。

滑りそうなところでは、斜面側の出っぱっているところをつかみながら、慎重に進みます。

雨は時折、パラパラ程度。

霧の中の水分が、当たっているくらいの。

 

ハシゴが始まりました。

当然ですが、上るより下る方が緊張します。

ハシゴや岩場などが連続する場合、手を自由にするためにストックをしまうことがほとんどだと思うのですが、後ろから来た3人連れにビックリしました。

ストックをしまわず、ハシゴを前向きに、ハシゴの隙間から見える地面にストックを突いて下りています。

こ、こわい…

・ストックを抜こうとして引っかかる、または変なところに突いてしまう

・足元が滑っても手があいていないので、どこにもつかまれずに滑り落ちる

・足元が滑って、前のめりに落ちる

この3パターンが想像できてしまう。

後ろにいられるのがイヤだ。

先に行ってもらおうと、靴ひもを直すフリをして抜いてもらいました。

 

もらい事故だけは、イヤです。

自分の不注意での事故ももちろんイヤだけれど、こんな危ない歩き方の巻き添えになるのだけは避けたいです。

 

いくつめかのハシゴで、ひとりが最後の2段くらいを滑り落ちた様子。

「ストック、しまったほうがいいんじゃないか」

と、滑った本人ではない人が言い出して、3人ともしまいました。

遅いよ…

あと2つくらいしか、ハシゴないってば。

そして、ストックはしまっても、前向きに下りるのは変えないんだ〜。

クルッと後ろ向きになった方が、ずっと下りやすいと思いますけどね。

水墨画の世界です。

 

6:35 八本歯のコル

 

7:00 分岐

やっと、ここまで来た~。

ほっとします。

たった1時間半でしたけど、長く感じました。

 

この視界。

旗が目印です。

 

風は涼しいな~、くらい。

稜線は吹き荒れているんだろうな。

 

すれ違う人に声をかけることは滅多にないのですが、

「上、風すごいですよ。お気をつけて」

と。

予報を知っている人もいれば、知らない人もいて驚かれました。

そうだよなぁ。

ここを歩いている限り、風が強いなんて信じられないよなぁ。

 

お、見えてきた。

 

7:40

霧がはれました。

2時間前と別世界です。

ちょっと休憩しよう。

風もそよそよ。

雨が降る前に、ここまで下りられたのは幸運でした。

 

8:20 二俣から見える景色です。

 

8:45 白根御池小屋

のどかすぎるだろう…

テントが日向ぼっこしてる。

平和だわ。

快晴です。

あったかーい。

 

トイレのマークが我慢していて、かわいい。

 

9:10 

名残惜しいけれど、行くか…

 

ん?

けっこう風が出てきた。

 

正面に見える鳳凰三山

あそこより高いところから、たった4時間で下りてきたんだ。

信じられない、いつも。

 

続きます。