登って潜って、月をみて。

生きていれば、こんな景色に出会うことができる。こんなに幸せな気持ちにさせてくれる。

金峰山~甲武信ヶ岳へ その3

なんて、手がかかった階段なのでしょう…

脚を高く上げなくてもいいように、真ん中が削られている。

これだけの階段を設置するの、大変だったろうな。

階段か、木道か。

30分、ミックスの状態です。

階段は同じ高さでの足上げが続くので、疲れてしまう。

苦手です。

歩きやすい階段にしてくださっていることに感謝しつつ、とぼとぼ歩きます。

 

夢の庭園ですって。

これから歩く道とあまり変わらないような気もしますが、こっちへいっても登山道に合流できるので歩いてみました。

 

やったー。

夢の庭園の先は、山っぽい道になりました。

 

展望がひらけると、急に元気が出ます。

 

10:00 前国師岳 △2570

 

10:10 国師ヶ岳 △2591.9

 

富士山はもちろん美しいですが、富士山の手前にある山々のグラデーションが本当にきれいです。

灰色がかった水色の濃淡が好き。

 

シラビソの香りでしょうか。

甘い香りが森の中に漂っています。

南アルプスの香りを追い求めて|十山株式会社

 

トンボのような影が、石にうつっていました。

シャクナゲの葉っぱです。

 

ピンクテープの目印がこれでもか、というくらいあります。

結局、この日、大弛峠から甲武信ヶ岳まで誰ひとり会いませんでした。

いつでも迷わずにいたいものですが、ずっとひとりのときはなおさら。

不安になったら、何度も振り返って景色を覚える。

覚えられなければ、スマホでパチリ。

ここの登山道のようにピンクテープがあれば、行く先にテープがあるかを確認しながら歩く。

見えなければ、後ろのテープの位置を確認しながら進めば、間違えてもすぐに戻れます。

奥多摩の山では、山歩きを始めた頃によく迷いましたもん。

どうしても分からなくって、戻って下山して温泉に行っただけになった日もありました。

北アルプスなどでは「ここしか歩けない」というところに道がつけられていることが多いですが、里山は登山道だけでなく、山菜をとる人が歩く道、林業に従事している方が使う道もあります。

 

ぐんぐん下ります。

地図では「倒木多い」となっていましたが、切ってあって整備されていました。

またいだり、くぐったりは時間がかかるなぁ、と思っていたのでホッ。

えー、まだ下るの?

もう、標高差400m以上、下ってるけど…

展望もないので、テンションがどんどん下がっていきます。

そういえば、いい香りもいつの間にかしなくなってるし。

 

11:40 国師のタル △2145.6

タルってことは、ここが底ね。

コル | 登山の用語集-ヤマレコ

もう下りたくないよぅ。

 

はいはい、登りですね。

がんばろー。

 

12:00 三角点

 

これは、こぶ?

こんな大きいこぶがついていて、木は大丈夫なのだろうか。

「こぶは菌にやられたあとのカサブタみたいなもの」とも聞いたことがありますが…

それにしても、でかすぎやしませんか?

 

ペースが落ちているのが分かる。

明るいうちに着けるだろうか。

不安になってきちゃった。

でも、さっき歩いていたよりも明るい森で、ちょっと元気がでてきました。

 

12:20 東梓 △2271.8

地図にあるコースタイムより、やっぱり遅いや。

2時間のところ、2時間10分かかっています。

ちょっとイヤだな。

がんばらないと。

 

倒木をくぐったり、こえたりを数回。

ルンルン歩いていたら、やっぱり下り始めたー。

地図で分かっていたけれども…

そして、また登るー。

 

展望がひらければ、元気でるんです。

だから、お願い!

13:10

やったー。

山々がまとう、秋の色の暖かさ。

きれいだなぁ。

でも、ここも10分以上オーバーしてる…

さっきは2時間のところを10分オーバーでしたが、ここは40分のところ。

そこを10分オーバーって。

計算がずれていく。

さっきのオーバーより、ずっとまずい。

 

本当は少し休みたい。

いつも地図のコースタイムの6~8割で歩いているので、すごくビビっています。

気持ちがツライ。

 

まだ、アップダウンが続きます。

脚を動かせるのは自分だけ。

前に出せていれば、必ず甲武信ヶ岳へ着ける。

無心で歩きます。

焦らず、急ぐ。

1歩を焦れば、事故のもと。

 

13:40 

ほんとですか?

2時間で着きますか?

 

13:43 富士見 △2373

富士山が見えないのに「富士見」ってついているところ、いっぱいあるなぁ。

富士山どころか、なんも見えない。

この計画、もともとダメだったんだ。

いつも、昼過ぎには到着する計画にしているのに。

金峰山をもっと早く出発していなければならなかった。

初めて歩く道だったので、暗い時間に歩くのを躊躇したのです。

 

お腹がなってる。

パンを食べながら歩き続けます。

苔、きれいだなぁ。

雨の日、歩きたい。

でもアップダウンは、いやや…

 

1歩が重い。

でも、振り返って歩いてきた道を見下ろすと、さっきここを見上げた場所は、とっくに見えなくなっているのです。

ちゃんと進めてる。

がんばれがんばれ。

自分の選んだ道。

 

14:30 水師 △2396

 

14:35

また富士山が見えました。

風が気持ちいい。

アップダウン続きで汗をかいていました。

 

14:40 源流への分岐

「最初の1滴」や「源流」って好きなんです。

でも今日は行けない。

 

ザレ場になりました。

疲れた脚には歩きにくいですが、景色がいいのが嬉しくて。

 

え?

あれ?

着いた。

甲武信ヶ岳に、着いた。

15:05 △2475

地図のコースタイムどおりなのですが、なんか信じらない。

富士見から2時間かかるところを、1時間30分かからずに着きました。

さっきオーバーした以上を、ここで取り返せたってこと?

13:40頃通過したところに「甲武信ヶ岳まで2時間」とありましたが、そこから1時間30分でした。

 

この写真の真ん中、いっぱい拡大しないと見えないのですが、金峰山の五丈石のでっぱりがあるのです。

涙があふれました。

これから歩く道が見えるのもいいけれど、歩いてきた道が見えるのは本当に嬉しい。

あんなところから歩いてこれたの?

信じられないです。

来てよかった。

がんばれてよかった。

心が、ぐぅぅぅぅっと震えています。

ちょっとゆっくりしよう。

この景色を忘れずにいられるように。

「できるだけ早く小屋へ着かなければ」と思っていたけれど、今はここにいたい。

 

大弛峠からこっちで、初めて座りました。

16時過ぎてしまう(ツアーの団体さん20人が17:30着でした。すでに真っ暗です)かも、と思ってたからホッとした。

 

15:45

小屋へ向けて出発

下りで20分弱です。

 

良かった、麦茶が足りて。

途中で補給できませんでしたからね。

大弛峠には自販機とかあったのかな。

 

16:05 △2380

甲武信小屋に到着しました。

 

続きます。