誰にだって、「はじめて」のときはあります。
私だって、登山だけに限りませんが、たくさんの「はじめて」を経験して、今、ここにいる。
はじめてを応援したいし、アドバイス(少ししかできませんが)が役に立って、山に登る楽しみを増やしたり、快適な時間に変えられたら、すっごく嬉しいのです。
先日いらっしゃったお客さまをあまりにあぶなっかしく感じたのですが、最近増えているのです。
SNSなどで、きれいな景色を目にすることが増えたのが原因なのかな。
「ここへ行ってみたい!」
そう思うのは私も同じです。
ただ、いきなりそこへ行けるかをよく考えてみないといけないと思うのです。
「雪山に行くのですが、そのときに着る服は売っていますか?」
いちばん上に着るハードシェルのことでしょうか?
「たぶん、それです」
売り場は少しずつ春夏ものを置くようになっており、数はかなり少なくなっていますが、いくつかはご案内できます。
どちらの山へ行かれるのでしょうか?
「今じゃなくて、今年の冬というか1年後に北アルプスへ行くんです」
残雪期ではなく、いちばん雪が積もっている今の季節にということでしょうか?
北アルプスの、どの山をお考えですか?
「つばめ山です」
燕に岳、で燕岳(つばくろだけ)という山のことですね。
年末年始なら山小屋も営業してますし、北アルプスの中では難易度が高い方ではないと思いますが、失礼ですが、普段はどんな登山をされていらっしゃるのでしょう?
「高尾山に、何回か行きました」
冬の燕岳に登る際は、ガイドさんをお願いするのでしょうか?
「ふたりで行きます(ご夫婦で来店)」
余計なことかもしれませんが、雪山は装備をそろえれば誰にでも行ける環境ではありません。
高尾山だけではなく、いろいろな山に登って、長く歩ける体力をつけてから夏に一度は燕岳へ登って、そのあとに雪山へステップアップしていった方がいいかと思います。
雪山に行くにしても、いきなり燕岳ではかなり危険だと思います。
雪の道を歩くには、アイゼンという爪を登山靴につけるのですが、つけられない登山靴もありますし、そういう道具に関する知識、気象に関する知識もないと厳しいです。
アイゼンをつけての歩き方、滑落したときにピッケル(刃のついたストックのようなもの)で自身の体を止める方法、ウェアの重ね方、そういった道具のことだけでなく、気温が高い日が続いたあとに冷え込んだ日は凍っているので歩くのをやめる、などの気象に関する判断をしなければならないこともあります。
何が何でも、1年後に行くのではなく、少しずつ経験を積んでいって、入門とされているロープウェイなどでアクセスできる雪山を歩いてから、秋になれば、またウェアが売り場に並びますので、そのときにご準備されてはいかがでしょうか?
「… そうします」
季節によっては、ある程度の道具を揃えないと行けない山もあります。
でも、道具を買えば誰もがどこへでも行けるわけではないのです。
出鼻をくじかれた、とお感じになったかもしれません。
でも、もし、自分の大切な人がこんなこと言い出したら全力でとめるので。
ということで、夏山に行くためのレインウェアを購入していただきました。
「晴れなら、持ってかなくていいですよね?」とおっしゃるお客さまに、なぜ、山に行く際はレインウェアが必要なのか、そこから説明でした。
「富士山に行くんです」
「屋久島へ行くんです」
春は、この言葉をよく耳にします。
「楽しみ! だけど、ちょっと不安」というお客さまも多いのです。
それくらいがいいと個人的には思います。
目標に向かって少しずつ、歩みを進めていくのもいいものです。
焦らないで、途中の山も楽しみたいですね。