単独行(たんどくこう)といいます。
私はほぼ単独行ですが、お客さまに
「すごいね」
「怖くないの?」
と、必ず言われます。
ひとりで歩くのは決してすごいことではなく、では複数人いれば危険が減るのかといえば、そうでもない。
自分以外が全員初心者だったとしたら、危険減りますかね?
その中の誰かにすごいポテンシャルがあって、私が滑落したときに本気を出してくれて、山小屋まで助けを呼んでくれたりってこと、期待していいのだろうか。
重い荷物を背負える人がえらいわけではない。
速く歩ける人がえらいわけではない。
すごい、とは思いますけどね〜。
今はさまざまな装備が、小型化、軽量化されています。
小柄な女性が、体格のいい男性と同じように、60リットルにパンパンにつめた20kg超を背負えなくてもいいじゃないですか。
軽ければ、自分がラクに楽しく歩けると思いませんか?
重い荷を背負えることは、自信になるでしょう。
でも、不要なものを削って50リットルにおさめるのも技術です。
体力がついてくれば、必ずしも必要ではないけれど
「これがあったら山で楽しく過ごせるだろうなぁ」
というものを持てます。
結果、目的地に到着してからの時間が贅沢なものになる。
私も30代は体力ありました。
今は、体力は右肩下がりに落ちているのに、体重は右肩下がりに増えてます…
その頃に必ず持って行っていた、山頂でゆったり過ごすための折りたたみのイス(1.5kg)なんて、絶対絶対、持っていかないですもん。
一眼レフカメラすら、置いていくこともあるのです…
でも、それぞれの体力に合った重さで、歩き切ることができればいいんです。
ひとりで歩くなら、誰かに持ってもらうことができないのですから。
そもそも、誰かと行くときも、自分のものは自分で背負えなきゃ。
判断するのは自分だけ。
判断できるのは自分だけ。
私は低い山であっても、歩く時間が長い山では引き返す時間を決めています。
いくつかのポイントを設けておいて、何時何分までに着いていなければ引き返す。
時間をメモしておけば判断に迷いません。
山頂まで5分、とかならオマケしますけど。
道がおかしいと思ったら、確実なところまで、必ず引き返してやり直す。
やっぱり合っていたとしても、引き返した時間を無駄だったとは思わないようにしています。
それを記憶に残してしまうと、次に同じようになったとき、
「いつも大丈夫だから、今回もきっと大丈夫」
と、根拠のない自信と思いこみで進んでしまいそうだからです。
戻って、やっぱり合っていたとしても
「合ってた〜。よかった!」
と、安心して歩いていけばいいんです。
初めてのひとり歩きは、誰かと歩いたことがあるルートを同じ季節に歩いてみるのもいいと思います。
よく行くお店でも、レジのカウンターをはさんで、向こう(店員さん側)からこっちを見るのって違うと思いませんか?
立っている場所で、見える風景は変わるのです。
視点が変われば、今までとは全く違う山歩きができるかもしれません。