登りたい山と、登れる山は違う。
そのことは絶対に忘れないようにしたい。
今年は遭難が特に多いように感じます。
富士山での遭難は体調不良がほとんどですが、毎日のように北アルプスで起きている遭難も同じです。
滑落もありますが、今まではあまり聞かなかった「体調不良」や「疲労」での救助も多いです。
疲労…
「もう歩けないから迎えに来て」って救助要請したということ?
暑さもあるのかもしれないけれど、それにしても疲労って…
こればかりは普段、山を歩いていれば自分がどのくらい歩けるのか分かりそうなものだと思ってしまう。
時間も距離も標高差も。
この暑さも加味して、無理しない歩き方やペースを再考したほうがいいのかもしれません。
少なくとも気温においては、10年前とは全く違います。
滑落の原因は報道されないので分かりません。
水分・塩分不足で急に脚がつったり、熱中症から意識を失ったり、持病があったり、という体調に関することなのか、技術や経験がともなわない山域にチャレンジして浮石に足をのせてしまったりバランスを崩してしまったのか、何度も歩いている山だけれど天候の悪化によるものなのか…
「そろそろ こういうのやめませんか…」富士登山ガイドから弾丸登山者へのメッセージ(静岡放送(SBS)) - Yahoo!ニュース
山へ死にに行く人はいない。
それぞれ求めるものは違うけれど、山で過ごす時間を楽しみに、息が上がりながらも一歩一歩、登ってゆく。
楽しく歩き、無事に帰れることがいちばんの目標です。
ここ数日、遭難の報道を目にするたびに、怖くてたまらなくなるのです。
自分もそうなったら…と思うと。
でも登りたい山がまだまだたくさんあります。
どこかの山に登れば、そこから見えた山に登りたくなったり、山の雑誌で初めて知った山に惹かれたり。
危なそうだから、と知っている山に登り続けるのは私はイヤだ。
こんなにたくさんのいい山がある日本に生まれたのですから。
登ってみたい山には、生きている限り、登りたい。
20代半ばで登山を始めたときは、剱岳、大キレット(北アルプスの南岳〜北穂高岳)、不帰ノ嶮(かえらずのけん:北アルプスの唐松岳から白馬岳へ向かう縦走路)、八峰キレット(北アルプスの五竜岳〜鹿島槍ヶ岳)ジャンダルム(北アルプスの奥穂高岳〜西穂高岳)など、険しい稜線にやっぱり憧れました。
登ってみたかったから、こういう雑誌などで山の難度を調べて、槍ヶ岳、奥穂高岳、南八ヶ岳の山々…と岩場に慣れていけるよう、徐々に距離をのばしていきました。
休みをとって計画しても、そこを歩く当日だけでなく、前日だけでも雨の予報が出ると…
「こりゃ、来年(その頃は、1年に一度しか5日間休めなかったので)だな〜。濡れた岩場は怖いもん。今回は燕岳から上高地までにしよう」
こうして延期しているうちに、私は山にスリルを求めていたのではなく、のんびりと大きな景色を眺めながら歩くのが好きなんだ、と自覚したので路線変更して、今に至ります。
「歩き続ければ着く」という山歩きがほとんどです。
険しい山々を歩ききる達成感はもちろん、すごいものがあるでしょう。
そんな技術をもった人たち、私の職場に何人もいますが、尊敬します。
テント泊の重い荷物を背負って、何時間も何日も歩き続けられる人も尊敬します。
以前はできていたけれど、山小屋泊のザックの重さに慣れた今、もうできません。
厳冬期に腰の高さまであるような雪をラッセルしながら歩ける体力がある人も尊敬します。
見上げるような岩壁や氷壁をのぼる技術を持つ人も尊敬します。
要救助者を背負って山を歩ける人や、日本海から太平洋までたくさんの山を越えて走るトランスジャパンアルプスレースで、標高の高い山をいくつもつないだ400km以上を5日ほどで走りきってしまうような、同じ人間なのか…と、信じられないような人たちもいます。
山には、すごい人がたくさんいる。
でも、いちばんすごいのは、自分で計画をたて、山で楽しい時間を過ごし、元気に無事に帰れる人なんです。
「次はどこの山に登ろうかな」と、帰りに思える人です。
山に行く前に体調をととのえるのはもちろん、ジムに通うのをやめたので、普段は家で30分以上、太ももを上げることやストレッチをしています。
高さが15cmあるステップ(懐かしの電話帳を重ねたくらいの高さ)を速めのテンポで昇降。
ステップがないときは、太ももを床と平行になる高さまで上げてその場で足踏み。
たったそれだけですが、続ければ効果はあります。
4:50 岳沢小屋を出発。
水分は3リットル超、持ちました。
下界ほどではありませんが、山もここ数年でだいぶ暑くなってきています。
持つ水分が多くなれば、背中のザックはそれだけ重くなる。
無理して持って体力を奪われるよりは、途中に山小屋があれば高くても買った方がいい。
でも今回のように、途中に山小屋がなければ持つしかありません。
筋トレだと思おう。
今日も雷雨の予報なので、雲が上がってくる前に着きたい。
前穂高岳の往復(約1時間)をやめても、私の足では穂高岳山荘まで6時間ほどかかるでしょう。
慎重に急ぎます。
岳沢小屋からの「重太郎新道」は、穂高岳山荘をつくった今田重太郎さんがひらいてくださった道です。
こういう方がたくさんいたから、私たちは山を歩けるのです。
急坂だと分かっている道は、できるだけ登りで歩くようにしています。
急な道を下るの、怖いですもん。
だから私は奥穂高岳へのルートを歩くときは、いつもこの向き。
穂高岳山荘から奥穂高岳に登ってこちらへ下ってくることは、たぶん、これからもないでしょう。
どちらから歩いても難度の高い道もありますが、ここに限っては違うと思うので。
危ないことを進んでやるつもりはありません。
15分で標高差100m上がりました。
振り返ると眼下に出発した岳沢小屋。
もうこんなに上がってこれた。
向こうには焼岳や乗鞍岳。
あ、昨日のオクラみたいなの。
花が咲いてる〜。
徐々に光が届き始めます。
5:30
おぉ~、このハシゴです。
けっこう長いですよね。
ここからの黄葉がすごいんですよ。
昨日のブログにも載せましたが、もう一度。
また見たいなぁ。
今は緑の季節。
たまに落石がおきます。
ガツッ、ズンッ。
ひぃ~。
体がすくむ。
滑落というのは、あの岩のように人が落ちていくということ。
気温を考えても、上高地から一気に上がると9:00くらいからここを歩くことになります。
太陽を遮るものがないので、キツイと思います。
今は6時過ぎ。
夜が明けてから1時間たちますが、まだ太陽は岩の向こうにあり、登山道には光が届かないので涼しく歩けています。
こんな夏が、気温が、これからも続くのであれば、山を歩く計画をたてるとき、慎重にならなければいけないと思いました。
続きます。