登って潜って、月をみて。

生きていれば、こんな景色に出会うことができる。こんなに幸せな気持ちにさせてくれる。

物欲との闘い、そしてほぼ負ける

見るたびに「これ欲しー」ってなるもの、好きなもの、山でどんな使い心地なのか興味があるものに囲まれて働いています。

毎日、物欲との闘いですよ…

自分が働いている以外のお店も行ってしまうものですから。

そして、今回も負けました。

まぁ、10年近く着たパタゴニアの薄手のフリースが破けたあと、気に入ったものがなく買っていなかったので、MILLETのアウトレット店で行われていた「2つ以上買うと20%オフ」にのっかって、買っちゃいました。

1着はこれから、というか私の場合はオールシーズン着られそうな薄手のもの。

半袖でギラギラ太陽にあたりっぱなしだと疲れるので、夏の稜線でも着よう。

少し重たいのと、かさばりそうなのが気になったけれど、そんなことはいいや!

鮮やかなブルーに黄緑のラインがすてき!

レディースは胸ポケットがないせいか、切り替えがなくて単色でつまらないので、メンズにします。

MILLETは大抵、メンズのほうが配色が好みだなぁ。

 

もう1着のフリースは、通気性を確保しつつ、保温性もあるもの。

裏地の半分くらいはポコポコしていて暖かそう。

店員さんによると、雪山でハードシェルの下に着て歩くとちょうどいいくらいの温度感だそうです。

雪山は行かないけれど、ほのかな温もりをくれるフリースを寒くなったら試してみたい。

これも配色がいい。

紺色に黄色のラインにやられました。

かわいすぎる!

これは男女兼用で、小さいサイズからありました。

のびるので、腰まわりのキツさはありません。

どちらも着るのが楽しみです。

 

Columbiaのくすみ色のTシャツは我慢できた。

さすがに何枚も持ってるものは、こらえられるようになりました。

昔から見向きもしなかった色だけれど、好みは変わるものですね。

 

 

山へ行くには、限りある資源(お金)で、身につけるものを揃え、現地までの交通費や宿泊費、いい景色を見ながら歩けたことに祝杯をあげるためのお菓子やCCレモン(お酒飲まないから少しは安上がりでも、なんせ食べる量がすごいので)代などを用意しなくてはなりません。

 

お客さまもそれは一緒。

山で楽しむお金も必要ですから、不要なもの、機能がかぶるものは買わなくてすむようにお伝えすることもありますが、同じシリーズでも配色が変われば全然印象が違いますから

「どちらの色も好きなんです!」

であれば、止めません。

買ってください!

価値があるもの、好きでたまらないもの、これがあれば毎日が楽しくなれるもの、にお金を使う。

いくら安くなっていても、不要なもの、気に入らない点があるもの、にはお金を使わない。

同じものなら、安い方に飛びつきます。

飲食物なら、思った味と違ってもお腹に入れば目の前からなくなりますが、残るものは吟味したいです。

 

先日、こんなことがありました。

今年の夏に初めてアルプスに登る、そのためのレインウェアを買いに来たお客さま。

レインウェアといっても、さまざまです。

アウトドアのものは性能がいい(蒸れを出しやすい、ストレッチがきいている、など)からと、山だけでなく旅行や通勤で使うためにレインウェアを買ってくださるお客さまも増えてきました。

日常では、傘をさして着ることが多いですよね。

ですから、生地には防水防風のフィルムが入り、縫い目から浸水しないよう処理がされていても、ファスナーやポケットは防水の仕様になっていないものがあります。

それに、裏地をつけないことで軽さを出せる反面、劣化が早まることもあります。

 

なぜ、そうするか。

買いやすいお値段にするためです。

 

山で着る方には、こういうレインウェアは勧められませんので、理由をお伝えして、しっかりしたレインウェアをご案内しました。

「安いから、こっちがいい」

安いからという理由で買って、山で嵐にあったらどうするのでしょう。

値段の差は1万円。

経験や知識がまだ少ないときこそ、道具に頼ってもいいと思うのです。

お金で安全と快適を買ってほしいと考えてはいけないのでしょうか。

濡れて低体温症で亡くなる方もいるのですから。

着ているレインウェアの差が、生死を分けるとしたら?

命の値段が1万円より安いなんてこと、ないですよね。

たった一度しか着られないわけではありません。

手入れをすれば、ちゃんと長持ちします。

私は10年以上着ています。

登山歴22年目になりますが、レインウェア3着目ですもん。

 

「雨の予報のときは登りません」

それもよく言われます。

晴れのマークしかなくても、ザァッと降ることもあるんです。

山の天気は変わりやすい、これはほんとです。

一瞬でずぶ濡れになって、数分後には、あれ? 雨雲どこいった? なんてこと、たくさんあるんですよ。

「すぐ木の下に行きます」

アルプスには森林限界といって、森の中を抜けたら遮るものはないんです。

だから雨や風だけでなく、雷だって怖いんですよ。

 

「このデザインがいいんです」

そうきましたか。

あまり脅かしたくないし、人の買い物の仕方にケチをつけたくはない。

でも、やっぱり…

「実際にこれを山でお使いになって、やっぱり雨が入ってくるから買い直し、となると二重の出費になります。これは普段づかいとして、止水ファスナーが使われていて耐水圧が20000以上のものを別に、山用として買う、というのであればデザインとお値段で選んでいただいていいと思います。

でも、森の中のハイキングならまだしも、森林限界を越える山へ行くとおっしゃっている方には、このレインウェアでいいです、とは言いたくないんです」

 

同じフロアに2人いましたが、私から離れたあと、他のスタッフにもおそらく同じことを聞いていて、聞こえませんでしたが、山用のレインウェアを勧められていました。

ただ売りたいだけなら

「小雨なら、これで行けちゃいますよ〜」

と買わせてしまうことだってできます。

でも、自分がされたらイヤじゃないですか!

「私はちゃんと高い山で着るって言ったのに、ダメなものを買わされた」

そんなふうにガッカリしてほしくないんです。

信用してもらえなくなってしまうし、買わせた自分もイヤな気持ちになると思います。

 

どのお客さまにもピッタリのアドバイスができる、とは残念ながら私はできていそうもありません。

でも、お客さまが登る予定の山をお話してくださったりするときには、自分がこれまで歩いてきた山、季節を思い出しながら、必要なものをご提案し、知っておくといいかもしれないと思うことを伝えています。

お帰りになってから、

「あ〜、これも言えたらよかった」

などと反省することも度々ありますが、その場その場では、ちっちゃくなってきた(ような気がする)脳みそをフル回転させています。

たまに次から次に言いたいことが溢れ過ぎて何を言ってるか分からなくなり、お客さまに笑われたりしながら。

 

楽しく登って、いい景色を見て、無事に帰ってほしい。

店員は、みんなそう思っているはずです。

南大沢のアウトレットの桜です。

山はまだ桜が残っているかも。

来週、行ってみよー。