先日、初めて上高地に行くというお客さまがいらっしゃいました。
登山者にとって上高地は通過点ですが、ここが目的地になる人だっていっぱいいる。
当たり前のことなのに。
バスから降りるたびに「横尾まで遠い(とぼとぼ歩いて3時間)よぅ~」って、毎回思うばかりでは、上高地に失礼だ。
気持ちを新たにしました。
まして、「初めて」は特別に大切です。
「でも、予報が2日とも雨なんです。残念だなぁ」
そんなことないですよ、上高地は雨でも楽しめるんです。
雨にけぶる静かな佇まいの大正池、しっとり濡れる森、早朝に行けるなら穂高神社の朝もや…
思いつくままに、上高地の美しい景色をあげました。
「そうなんですか、楽しみになってきました」
よかった。
「雨予報だから、レインウェアを買いに来たんです。あと、持ってないのでリュックも」
歩くのは上高地のあたりだけ、ってことでしょうか?
「教えてもらったので、大正池から明神っていうところまで歩いてみます」
じゃあ、レインウェアいらないですよ。
「え、そうなんですか?」
歩道は広いので、傘をさしても歩けます。
人がいるときは、並んで歩かないなどの配慮をしていただければ大丈夫ですよ。
行く場所によっては、なにがなんでもレインウェアじゃなくてもいいんです。
傘をもちたくなければ、ポンチョだっていい。
ポンチョなら、背中の荷物もおおってくれますし。
「春に、屋久島へ行くんですよ」
じゃあ、そのときにレインウェアを揃えればいいですよ。
でも、山のレインウェアってどんなもんか試着だけでもしてみます?
レインウェアといっても、いろいろあるんですよ。
「はい、ぜひ!」
接客して楽しいお客さまって、やっぱりいます。
2週間後、「あ、いた~。おねーさーん」
あら、いらっしゃいませ。
上高地はどうでした?
楽しめましたか?
「1日目は雨で、2日目は晴れました」
晴れたんですね、それはよかったです~。
「雨でも楽しいんだよ、って言ってもらえて本当によかったです。雨やだなぁって思いながら行くのと、気持ちが全然違いました」
うんうん、お役に立ててよかった。
話がはずみます。
そのあとも、毎週のように来てくださって。
「上高地が楽しかったから、乗鞍岳に行く計画たてたんです。今朝も体力つけようと思って、高尾山に行ってきたんですよ」
そうなんだ!
なんか、嬉しい。
この仕事は、山を好きになるお手伝いもできるんだ。
じーんときました。