登って潜って、月をみて。

生きていれば、こんな景色に出会うことができる。こんなに幸せな気持ちにさせてくれる。

景信山へ秋のさんぽ

今年の1月、職場のみんなで高尾山の先、景信山で餅つきをしました。
そのときのブログです。
https://blog.hatena.ne.jp/yueguang/yueguang.hatenablog.com/edit?entry=26006613500690424


「楽しかったから、またやろうよ〜」
ということで、計画しました。

ところが、1週間前からその日だけ雨の予報。
土日祝しか餅つきはできません。
このメンバーで行ける日は月に2回。
なおかつ土日祝のみなので、日にちを変えるのは難しい。
「まだ雨マークついてるね〜」
と、毎日言い合っていました。
前回は雪が積もっており、山歩きが初めてという人も含めて何人もスッテンコロリンをしており、
「雨なら行きたくない…」
そりゃそうだよね。
晴れてほしいなぁ…
天気図を見て降らないんじゃないか、とは思っていたのですが、他人を巻き込むわけにはいきません。
その後も予報の雨マークが外れることはなく、2日前にキャンセルさせてもらいました。
餅つきはキャンセルだけれど、私は登ろうと思っていました。
何人かが「お供します〜(桃太郎?)」と言ってくれ、勤務明けに高尾駅へ向かいました。

メンバーには、3月に定年退職した前所長もいました。
その前所長、自宅から4時間かけて高尾駅まで歩いてきました…
これから山へ登るのに、そんなに平地を歩いてこなくてもいいじゃないのよ…
挙げ句の果て、バスの時間を間違え(1時間に1本しかないのに)、のんびりファミリーマートで私たちのデザート買っていたそうです。
タクシーで小仏の登山口まで追いかけてきて、登山口の手前で追いつかれました。

自由すぎるおじさま達。
ひとりは、何度言っても厚着をやめずにすごい汗をかいている。
「水飲んだほうがいいよ」
と言ったら、持ってないし!
「おれの水分補給は、柿とみかんだ」
…なんでそうなるのよ。
みかんはともかく、柿?
柿が水分補給になる?
液体にしようよ。
しかも、小仏バス停から登山口までの間にある民家の前で売っていた梅干しを買っていた。
それを出そうとするから、
「梅干し食べたら、よけい喉乾くでしょうよ…」
「そぉかぁ?」
そうだよ!

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12:00 登山口
13:00 景信山

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無風で17℃、晴れ。
暑すぎるのでダラダラ歩き、なんとなく到着〜。
景信山は、鬼滅の刃の柱のひとり、時透無一郎くんの出身地です。

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富士山は見えないかぁ。
紅葉は始まっていました。
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茶屋の方にご挨拶をし、
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・野草のてんぷら(シュウカイドウやキクイモ)
なめこうどん(味噌仕立て、ゆず)
・もつ煮
・おでん

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野草のてんぷらにかける塩、何種類かあるのですが、茶屋の方のオススメはこの塩!
肉はもちろん、焼きそばがおいしいと常連さんが話していたそうです。
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なんでだろう、温泉卵の味がするんです。
もしかして、この塩をかけたゆで卵を食べれば大涌谷に行った気分になれるのではないか…
気に入ったので買いました。
野草のてんぷらを何度もおかわり。
注文のたびに、葉っぱが違う。
色が赤茶、ほんのり甘みを感じるフルーツのような爽やかな葉っぱもありました。

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たらふく食べて、
「また餅つきに来ます」
と、茶屋の方にご挨拶をして

15:00 下山開始
15:45 一旦下って、登り返して城山の山頂

昨年の台風の影響で使用中止だったトイレも使えるようになっていました。
お酒を飲んだためにトイレが近いおじさま達を待っていたら…
虹!
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雲の中に消えてしまい少ししか見えませんでしたが、なんか嬉しかった。

城山からは、いい道です。

16:10 一丁平
富士山のところには厚い雲。
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薄暗くなってきました。
まき道を黙々と歩きます。
高尾山の山頂もまきました。
そのあたりで陽は落ち、暗くなりました。

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ヘッドランプをつけます。
闇の中を歩くの、好きです。

17:50
稲荷山コースの登山口に到着。

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餅つきはできなかったけれど、秋を楽しみ、おいしいものをたくさん食べて。
山はやっぱり楽しい!

山中湖 鉄砲木ノ頭

私の休みに合わせて休んでくれたツレと、鉄砲木ノ頭(てっぽうぎのあたま)に向かいます。
でっかい富士山を見に行こう!

富士急ハイランドと富士山です。
高速道路から撮りました。
右側が富士山ですが、少し雲がかかっています。

今日の山歩きは往復で1時間。
夕焼けも見たいと思っているので、遅めの10:00出発です。

東富士五湖道路の河口湖から山中湖の間が秋らしい。
ススキでいっぱいでした。

山中湖の無料駐車場に車を止めます。

ほうとう さんさい」で昼ごはん。

まず、ワカサギの天ぷら。
ワカサギは、イワシの10倍のカルシウムだそうです。
臭みもなく、ほろりとおいしい。

山の恵みがいっぱいのほうとう、大好きです。
全部載せの「富士山ほうとう」にしてよかった。
いろいろなキノコが入っています。
カボチャが甘〜い。

そのまま、山中湖沿いを進みます。
紅葉、黄葉、ほんとにきれい〜。
いいときに来ました。

山中湖交流プラザ近くから脇道に入ります。
標高を上げていくと、小さな駐車場があります。
車ならばそこに止めて登りますが、景色を見るためにひっきりなしに車が出入りします。
止められる台数は少ないのですが、登る人はあまりいないので、午後の早い時間までなら待っていれば空くでしょう。
トイレもあります。

もっと上、三国峠にも駐車場はあります。
こちらの方が白線も引いてあり、近くから富士山を見るだけなら止めやすそうです。

スニーカー(あればトレッキングシューズ)がいいと思います。

登り始めてすぐ、何度も何度も「おーい」と呼ぶ声。
その人は遭難してました。
木の階段を上がればいいだけのに、なぜ?
登り始めてすぐに
「景色が良かったから写真を撮ろうと、道を外れた」
と。

はじめは、なんの「おーい」か分かりませんでした。
「助けて」とか「道に迷ってます」にしてくれないと…
すぐ、ほんとにすぐそばに私たちが歩いていた道があるのに、少しそれただけ(どうしてそれたところへ戻れないのか)で分からなくなってしまうものなんですね。
気をつけなきゃ、と思います。
「水、持ってますか?」
往復1時間かからないのですから、カメラとスマホしか持ってません。
「おーい」を言い過ぎて、喉が乾いてしまったんですか…
まぁ、無事に駐車場へ下れて良かったです。
でも、いちばんいい景色を見れてないんですよ。

自分の背丈よりはるかに高いススキの道。
陽の光を透かしたススキが青空に映えます。
振り返ればススキの大海原。
その奥に紅葉、山中湖、そして富士山。
ツレは
「こんな景色見たことない! がんばって登って良かった」
と感激していました。

駐車場までなんて、もったいない!
山頂まで行かなくとも、15分ほどでススキの海は見えます。
駐車場にはたくさんの人がいましたが、山頂はほかに誰もいませんでした。

木の階段か続きますが、下の土が流れてしまっているため、まるでハードルのようです。
歩きにくさを考えてくれたのでしょうか、途中からはススキがなぎ倒されて道がつけられていました。

富士山、ススキ、山中湖…
視界に入るすべてが完璧に美しい。
すごいや、ススキ山(勝手に命名、期間限定)。

山頂には、山中諏訪神社の奥宮。
どうかどうか、距離を取らずに笑い合える日々がまた戻ってきますように。
山の地図では「鉄砲木ノ頭」ですが、山頂にはどこにもそんなこと書いていません。
標高1291m 明神山。
鉄砲木ノ頭の方が覚えやすいけどな、不思議な名前だから。

下山します。
上は柔らかめの土なので少し歩きづらいですが、距離は短いのでゆっくりと。


駐車場に到着。
夕焼けを待ちます。
駐車場は、カメラをかまえた人でいっぱいになっていました。
太陽が眩しい。
無風でぽかぽかしているので眠たくなります。

山中湖の日の入りは16:45くらいですが、16:10には富士山に太陽は沈みました。
そのあとも光の帯を四方八方にのばします。

雲が金色、ススキも金色。
湖面も次第に染まっていきます。
神々しい。
虹色の雲も見えます。

太陽が沈んだら急に冷えてきました。
これからがマジックアワー。
さっきまでは水色がかったグレーのシルエットだった富士山。
山頂の雪の白がくっきりしてきました。
雲が形をさまざまに変え、美しい夕暮れ。
幸せだな〜。

鏡のような湖面をスワンボートが静かに進んでいきます。
何枚も何枚も写真を撮ったのに、景色がきれいすぎて、目で見ては撮る、を繰り返してしまいます。
茜色から水色へ、空のグラデーションもほんとに美しい。

今日もいい日でした。
手がかじかんできたから帰ろうね。

那須岳へ その3

 

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予定していた三本槍岳はあっちだ。

ありゃー、三本槍岳方面だけ雲の中。

行っても何も見えないよなぁ。

 

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那須岳は、トイレがロープウェイの駅にしかありません。

三斗小屋温泉を出てから北温泉に着くまで、三本槍岳にも登るとコースタイムは6時間以上。

ぐるり歩くと、けっこうな距離とタイムなんですよね。

夏なら汗で出る。

しかし今、ここは冬。

三本槍岳が雲の中だったため、私の中でトイレが優先されました。

北温泉までここから5km、タイムは2時間。

そうと決めたらお腹が空いた。

おにぎりを食べます。

…冷えてない!

手ぬぐいでくるんでから、ザックの中の方に入れたから。

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おいしーい!

でも、ちっちゃい…2セットにして良かった。

具は梅干。

アルミホイルに野沢菜や昆布が包んでありました。

何かあったときのために1つだけ残しておこう。

 

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今回はピークを踏まず、温泉と温泉をつなぐ山旅になりました。

ひとりだからこその自由かもしれません。

自分で全部決められる。

 

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おにぎりを歩きながらほおばっているうちに、どんどん視界が開けてきました。

今振り返ったら三本槍岳も、雲がとれているかもしれません。

でももう、先に進むことにします。

トイレに行かねばならないから!

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これから歩く道の先に関東平野が180°広がり(うしろの180°は山!)、筑波山も見えます。

双耳峰(山頂がふたつある)という特徴があり、私でも見分けがつく数少ない山です。

「あれ、なんていう山?」

この質問がいちばん困ります。

分かんないのよね、ほとんど。

 

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しずくが宝石のよう。

瞬間の美しさ。

 

北温泉までの道は、いい道でした~。

明るい斜面につけられた歩きやすい道。

つい15分前の雪はなんだったのだろう、という感じです。

ほとんど雪はありません。

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鹿の湯で会ったおじちゃん、北温泉を教えてくれてありがとう。

そうじゃなければこの道を歩けませんでした。

土曜日でしたが登ってくる人も少なく、穴場かもしれません。

これから歩く道がずっと見える。

ほんとにいい道~、気持ちがいい!

太陽でぽっかぽかで無風だから、半袖になりました。

ついさっきまで冬だったのに。


そして油断していると顔に当たるエビのしっぽ。

当たって砕けない、落ちて砕けないのだから…

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10:20

赤面山(あかづらやま)への分岐

北温泉まで5kmって書いてある…不思議ですね。

三本槍岳に雲がかかっているのを見た「北温泉分岐」でも5kmって書いてありました。 

 

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滑り止め(と思われる)の針金が菱形に張り巡らされています。

これがけっこう歩きづらいのです。

何度か滑りました。

そのあとは落ち葉でふかふかの道。

聞こえはいいけれどそこに足を置いたとき、どこまで沈むかが分からなくて怖い。

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標高1500mを切ると、雪が幻だったかのように穏やかな秋の山になりました。

エビのしっぽに興奮してから1時間しかたっていないのに。

すっかり晴れました。

でも三本槍岳をおしい、とは思いません。

景色がいいことは以前登って分かっていたので、また見たかったけれど。

今はトイレに行きたくて切羽詰まっています。

これに、三本槍岳への往復1時間を足したら大変なことになっていました。

 

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この周辺はハイキングコースのようで、年配の軽装の方がのんびり歩いていました。

ちょうど紅葉でいいですね。

 

昨日、姥ヶ平から茶臼岳を見ました。

その裏側をずっと右に眺めながら歩きます。

こちらから噴気孔は見えません。

歩くにつれて、茶臼岳はどんどん遠ざかっていきます。

 

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熊をからかわないように…そんな余裕のある人、います?

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12:10

北温泉に到着~。

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券売機で700円の入浴券を買って受付へ。

温泉プール(水着着用)や露天風呂、いくつもお風呂があるようです。

北温泉は、いかにも湯治宿といった感じでした。

隙間からのぞけた部屋は、昨日泊まった三斗小屋温泉のような小さな和室でした。

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どこのお風呂にしようかな。

うろうろしていたら「芽の湯(目の湯)」というところに着きました。

脱衣所は狭い。

3人でいっぱいです。

どんなお風呂なんだろう。

中は誰もいない。

向かって右の細い浴槽は何?

脱衣所に戻り、常連さんらしき方に聞きます。

「かけ湯よ~」

足湯かと。

それにしては座れないし、なんだろうと思っていました。

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向かって左の浴槽からも、かけ湯の浴槽からも「もったいない」という概念が吹っ飛ぶくらいのかけ流しです。

鉄の匂いの薄い茶色い湯がダッバダッバとあふれて足元にどんどん流れます。

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洗い場はないので、かけ湯をしてとぷんと湯につかります。

…あちぃ。

どっかぬるいところはないか?

奥よりは手前が若干温度が低いような…

でも熱くて痛いのにクセになりそう。

体を拭いたタオルも薄く茶色になりました。

ほかのお風呂も入ってみたかったけれど、汗がとまらない。

ここからバス停まで1時間歩かないといけないし。

このお風呂だけでいいや~。

サッパリした!

 

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13:05

登山靴からサンダルに履き替えて、バス停へ向かいます。

北温泉を出て、1つだけ残しておいたおにぎりを食べながら駐車場への坂道を上っていると、4歳くらいでしょうか。

お母さんと手をつないだ男の子が

「何食べてるの?」

おにぎりだよ。山登ったらすごーくお腹がすいちゃって。

「かわいそう、お腹すいちゃったの?」

かわいくて笑っちゃいました。

温泉プールに入りに来たのかな。

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13:20

駐車場から「駒止の滝」が見えます。

午後になったせいでしょう、陰になってしまいましたが黄色い山肌に一筋の滝。

きれいでした。

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バス停に向かって舗装路をとぼとぼ歩きます。

車が多く、横を飛ばしていくのでヒヤリとします。

県道に出てバス停の時刻表を見ると、40分くらい待つ。

待っているのもつまらないので、行けるところまで行こう。

 

14:15

八幡崎、ここまでで北温泉から3km。

 

ここから那須湯本温泉まで3km。

なら歩いちゃおうっと。

 

14:35

つつじ吊橋からの眺め

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15:00

殺生石まで戻ってきました。

その上には茶臼岳が見えます。 

 

16:00の高速バスまで1時間ある。

お腹すいたなぁ…

えっ、蕎麦屋さんもハンバーガー屋さんもしまってる…

この空腹をどうすればいいの?

バス停前の観光案内所で聞いてみよう。

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聞いてみるもんですね!

一昨日泊まった清水屋さんのそば、お土産屋さんだと思っていた「みちのく」さんが喫茶も営業していました。

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コシヒカリの玄米のすいとん、おいしそう!

観光所のお姉さん、ありがとう!

視界いっぱいに、こけしが…

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デザートも、温泉卵とミルクアイスを混ぜるなんて斬新。

小豆をポップコーンのようにサクサクさせたものがのっています。

これがおいしかったです。

満たされた~。

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高速バスで新宿まで。

あ~~、顔がヒリヒリする。

バスの暗い窓にうつった顔は赤い。

日焼け止め塗るの忘れたな、そういえば。

夏以外(夏は5分で落ちるので塗るだけムダだと思っています。こまめに塗り直すのなんてめんどくさい)は塗ろう、って決めたのにな〜。

つい4日前に。

 

那須岳へ その2

昨夜の窓枠を激しく揺らす風なんて、まるでなかったかのような静かな朝でした。

風向きのせいか、弱まったのか。

電波が入らないここでは確かめようがありません。

登ってみて風がまだ強ければ引き返して、昨日の道で殺生石へ下山すればいいや。

 

7:10

水場の左側の道から出発!

雪はうっすら積もっている程度でサクサク音がします。

チェーンスパイクは最後まで使わずに済みました。

なだらかな登りで始まります。

 

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7:30

噴気孔からもぅもぅと。

瞬間的には視界が遮られるほどです。

すごい硫黄の匂い!

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この辺りから雪が多くなってきました。

普段よりも小股歩きを意識します。

街で歩くように大股で歩いてしまうと、つるりと滑ったときに踏ん張ることができません。

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快晴の予報だったのになぁ…ガスってる。

起きたとき、陽の光の染まる山肌を見て「やったー!」と思ったのですが。

ま、いっか。

山は歩いているだけで楽しい(よほどの悪天候じゃなければ)から。

 

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枝が雪でコーティングされています。

砂糖をまぶした、かりんとうみたい。

この真っ白な枝が、背景の白に溶け込みます。

アルプスや八ヶ岳のようなダイナミックな景色ではありません。

雪がついた枝、それだけの景色です。

それなのに見とれてしまい、なかなか進みません(稜線に出たらもっともっときれいで、ますます歩みが遅くなりました)。

北温泉につかって、高速バスの時間に間に合うように歩くので、今日はけっこうタイトな計画です。

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でも時間に追われてせっかくの景色を楽しまないなんて、なんのために登ってきたのか分かりません。

時間に余裕がない時は、ポイントごとに時間を区切って予定をたてて、時間が過ぎていたら〇〇をショートカットする、と決めておきます。

 

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すべてが白。

びっしり雪がついて、まるでサンゴが白化しているよう。

ここが海なのか山なのか、一瞬分からなくなりました。

サンゴの白化は、温暖化やいろいろな理由によって起こりますが、環境が回復せずに白化の状態が続くとサンゴは死んでしまいます。

そんなことは知らずに、初めて海中で白いサンゴを見たとき、青い海に差し込む陽の光でさらに白く輝くサンゴを美しいと思ってしまいました。

そのことを急に思い出すくらい、真っ白な世界がずっと続きます。

「青空が良かった」

さっきまでそう思っていたのに、今は

「この真っ白な世界、いいなぁ〜」

と思っているのです。

今いる世界を楽しめるようになれれば、いつでも幸せかもしれません。

 

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8:20

隠居倉(いんきょぐら)…名前の由来は何でしょうか。

標高1819m。

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稜線に出ました。

風が少し吹いていますが、ニット帽をかぶるほどではありません。

先に進むことにします。

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太陽や青空がお出ましになりました。

太陽は本当にすごい。

出てくると途端に体感温度が変わります。

 

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名前が分からない鳥が群れでガスの中へ飛び去っていきます。

「鳥は先が見えなくても飛べるんだな」

と思いました。

すぐにそれは違う、と気づきました。

先まで行けば、またその先が見える。

今、歩いている私もそうです。

ここからは50m先しか見えない。

でもそこへ行けばまた50m先が見える。

足を前に出しさえすれば必ず着く。

山を歩いていてつらいと、自分をそう励ましています。

 

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白い世界。

なにもかもがきれいで、笑いがこみあげてきます。

昨日は顔に当たる氷の粒が痛かった。

小屋の中も寒かった。

でも登ってきて良かった。

 

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稜線を歩いていると、これからもっともっと発達するのでしょうが、エビのしっぽができ始めていました。

「エビのしっぽ」とは樹氷の一種です。

風に飛ばされた雪が植物や岩に付着して積み重なって長く伸び、凍ってエビのしっぽのように見えます。

風が強いほど風上側に大きくなっていきます。

片側に発達し、その反対側には全く雪が着いていないことが多いです。

初めて10月の硫黄岳(八ヶ岳で風が強い山)で見たとき「なにこれ!!」と興奮したのを覚えています。

 

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9:00

熊見曽根(この名前からして、熊がいそうです)

晴れていれば絶景であろう稜線ですが、ここが今日いちばんの強風でした。

びょぉびょぉあおられながら進みます。

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ケルンにもエビのしっぽができつつあります。

風下にはまったく雪が着いていません。

足元の石にもこまかく着いています。

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ハイマツの実も、雪の襟巻きをしています。

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「1900m峰」という道標からけっこう下ります。

雪が真っ白な花畑に見える…冬の桜だ。

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このあたりから太陽に溶かされた雪でぬかるみが発生。

ここで尻もちは大惨事…慎重に下ります。

と思った瞬間、前を歩いていた男の子が滑った!

スニーカーか…しかも白。

汚れているけど多分、白。

なんで白い靴履いてきたの…

 

9:30 清水平

溶け始めたエビのしっぽがバラバラと落ちてきます。

凍っているから、当たると痛い。

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9:45

北温泉分岐

計画より30分早い。

が、心配事が…そうです。

トイレです。

 

続きます。

 

 

三斗小屋温泉 大黒屋

早すぎる到着でしたが、ほとんど待たずに部屋へ案内してくださいました。
大黒屋 三斗小屋温泉 総合情報 | 山の温泉ガイド


寒い…
私が寒いんだから相当寒いだろうな、と室内の気温計を見ると3℃。
当たり前ですが、息が白い。
本気出さなきゃいけない寒さだな。
ダウンを着るだけですが。

風呂は14:00から。
早くぬくもりたい…
待ち遠しいです。
それまではダウンで耐えようと思ったけれど、灯油ストーブをお借りしました。

窓から外見たら、吹雪になってるし!
歩いてきたときより寒いわけだわ。
風が窓枠をゴトゴト揺らしています。
良かった、早く着いて。


この宿に、あるものとないものを書きます!

まず、あるもの
・山の中なのに個室
・無色透明の温泉
・1,000円で貸し出してくれる灯油ストーブ
・お湯とお茶っ葉

ないもの
・部屋の鍵
・21:00以降、部屋の灯り(ヘッドライトを!)
・浴衣
・タオル
・テレビ
・携帯はつながりません
・コンセント(夕方に電気がついたら、宿の方にお願いすれば充電してもらえます)
・石けんやシャンプーは使えません

トイレと洗面台は共同です。
トイレは清潔な和式。

14:00になると同時にお風呂へ。
早く早く、ぬくもりを!
女性はこの時間、大風呂。
奥は少し熱めなので、熱いのが苦手な人が集まると手前にひしめき合うことになります。
4人が限界ですから譲り合い。

15:00からは岩風呂。
こちらは狭く、3人が限界。
大風呂のときは人がどんどん来たので、温まる前に出てしまいました。
なので、こっちで温まろうと思っていたけれど、ぬるい…
いくらでも入っていられる温度じゃ、今は温まれない。
次の時間で、大風呂にちゃんとつかろう。

お風呂は1時間ごとの男女交代です。
なんででしょうね…
交代の時間を5分以上過ぎているのに、ワイワイと中から男の声。
出てくる気配がないので、宿の方に声がけしてもらいました。
「時間が過ぎていますから」と言われても、着替え中もワイワイ。
こういう人たち、キライ。

夕食は17:30
部屋までお膳を持ってきてくださいます。

食べてすぐ温泉はダメだと分かっていますが、ここを逃すと20:00からの枠は30分しかない。
絶対混む。
だから行く!
はぁ〜〜〜、あったまる〜〜。
ひとりでゆっくり湯につかれました。

前回の宿泊は、女が私ひとりだったので、いつでものびのび、湯につかり放題だったのです。

夕食後、山の雑誌「PEAKS」のバックナンバーを見ていたら、自分が載っていました!
山小屋で働いていたとき、そういえば取材の人が来たっけ。

21:00に消灯。

朝は6:00に灯りがつきました。
外を見ると朝陽をあびた山肌が輝いていました。
光が届かないところは影をつくり、その対比がとてもきれい。

朝風呂は湯冷めしそうなので、やめます。
混んでたし。

朝食は6:30頃です。
夕食と同じく、お膳を部屋まで運んでくださいます。
温泉玉子つき。
お湯の入ったポットもあるので、ありがたくテルモスにつめます。

朝ごはんで体もしっかり温まりました。
おにぎり4つ(2つで500円の2セット!)も受け取りました。
1セットでいいのでは? と言われましたが、お腹すいたらどうするのよぅ。
結果は、もらって正解でした! 那須湯本まで食べられなかったので。
おにぎりは寒いと凍ってしまうので、大切にザックの背中側に入れます。
凍ったおにぎりは、心も凍りますから。

玄関前で水をくみます。
山の水を飲むと、山から力をもらえる気がします。

さぁ、出発!

続きます。