登って潜って、月をみて。

生きていれば、こんな景色に出会うことができる。こんなに幸せな気持ちにさせてくれる。

四国一周 2017/10/31 その2

11番 藤井寺

 

本堂前の石柱に「同行二人(どうぎょうににん)」と彫ってありました。

同行二人。

お遍路で一人で歩いていても常に空海さんと一緒ですよ、という意味です。

 

屋根がすごい。

白龍弁財天も美しかった。

 

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12番へ向かう山道の下見をしておこうと向かった先にあったのは、八十八ヶ所めぐり。

小さな祠のなかに、八十八の寺のご本尊さまと空海さんがまつられていました。

全部で手をあわせていたら1時間半たっていました。

 

ひんやりした空気。

滝の音。

でも静か。

違う世界にいるようでした。

無心で歩いていました。 

 

頭がのぼせたようになったまま、宿に戻ります。

山々のシルエットが夕陽に染まっていました。

今日も45000歩。

がんばりましたー。

元気に歩けた。

 

8時間ほどの歩行、ベンチでおにぎりを食べた15分だけしか座ってない!

 

平坦な道だと、10kg以上あるのにザックの重さは感じないもんだなぁ。

こうやって歩き慣れるんでしょうね。

ただ、シャンプーが半分に減っていた…ジップロックに念のため入れていたから良かったけれど、ザックの中にこぼれていたら大惨事でした。

汁ものには気をつけましょう。

 

へんろ道の標識もかわいいけれど、石に彫ってあるものが好きです。

見つけると嬉しくなってしまいます。

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宿での夕食のときのこと。

食事の時に限らず、宿の中ではいろいろな話が聞こえてきます。

聞いていて楽しい話もありますが、たいていはそうではありません。

 

「吉野」のご飯はとてもおいしかった。

おいしいトンカツと白飯をもりもり食べていたとき。

隣のテーブルから

「俺の荷物は3kgだよ」

と聞こえてきました。

四人掛けですが、グループではなく他人同士。

何回目かのお遍路だというその男性に、他の人が質問しています。

「雨のときはカッパですか? それとも傘?」

「そんなの持ったら重いし、邪魔だろ。お遍路の格好して濡れて歩いていれば、傘なんてすぐに誰かがくれる。車で送ろうか、って言われることもある」

「…そうなんですか」

「雨が止んだら捨てる。雨が降ればまたもらえるからいいんだ」

 

そうかもしれません。

まだ歩き始めたばかりですが、声をかけていただくこともありますし、飴をもらったりもします。

善意をあてにする、ともちょっと違う。

善意をもらって当たり前と思い、使い捨てにする。

荷物は軽いほど、確かに歩くのは楽になる。

速くもなる。

けれど、「雨が降ってきましたよ、お遍路をしている私が濡れていますよ、誰か傘をくれませんかね?」という気持ちで歩いているの?

傘をくれるのはそっちの勝手だから、その傘をどうしたっていいよね、ってこと?

 

声も大きくて、どんどんイヤな気持ちでいっぱい。

ご飯をガーっとかっこんで部屋に戻りました。

明日、一緒に歩くのイヤだな(朝ご飯食べて出かけたら同時の可能性ありますよね)。

うんちくたれられたらキレそう。

道で会いたくない。

2日目ですでに順番通りに歩いていないので、もう気になりません。

地図を見て、12番ではなく、違うお寺からまわることにしました。

 

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今日、藤井寺の八十八ヶ所を歩いていて、ふと思いました。

なくしたもの、手に入らないもの、手に入らなかったものを思うのではなく、今ある幸せや縁に思いを寄せよう、と。

つまんないこと、思ってもどうしようもないこと(自分にはどうしたって変えられないこと)に気持ちがとらわれてしまったら、四国を歩いたことを思い出そう。

お寺にいると、とても気持ちが穏やかになりました。

そのことを一生懸命思い出すことにします。

今あるもの、縁への感謝を忘れない人生を送れますように。